萌える男 (ちくま新書)

著者 :
  • 筑摩書房 (2005年11月7日発売)
3.22
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本棚登録 : 287
感想 : 40
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ライトノベル作家の著者が、「萌え」について考察をおこなっている本です。

たとえば著者は、次のような主張を展開しています。「萌えの世界では、恋愛関係は「強い女性側から降って湧いてくる」か、あるいは「微妙な日常の関係が、気がつけば恋愛関係へと発展し、かつ今までの関係も継続する」というものになる。これが萌えの世界における恋愛のルールで、「男が女を強引に口説く」というマッチョイズムは注意深く排除されている。萌えの世界の恋愛は、男女平等か、あるいは、女性上位なのである」。

ほかにも、「萌える男」は「受動的態度で女性に対して一種フェミニスト的」だとか、美少女ゲームの「メイドさん」は「御主人様」に奉仕することを至上の歓びとするが、「実際には御主人様の方がメイドさんの尻に敷かれて支配されている……という相互補完的関係になっているストーリーが多い」といった主張がありますが、どれも説得力に乏しいように思われます。

ファンタジーをあくまでファンタジーとして享受することは、(よい趣味か悪い趣味かは別として)なんら批判されるべきことではありません。著者が主張するように、恋愛資本主義のなかでワリを食う男が出てくることは必然的であり、「萌え」はそうした男たちが現実から飛躍した「脳内恋愛」によって「自己救済」することなのであれば、それ自体は非難されるべきことではありません。しかし、だからといって「萌える男は正しい」わけではないでしょう。著者は、オタク文化に対する風当たりが強いことを憂慮するあまり、オタク文化のポジティヴな可能性を前面に押し出そうとしていますが、支えるべき戦線を見誤っているように感じます。宇野常寛は、本書の議論を時代遅れのオタク=ニュータイプ論だと切って捨てていましたが、本書の立場は宇野の「レイプファンタジー批判」に対してまったく無力だといわざるをえません。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: メディア・サブカルチャー
感想投稿日 : 2018年12月23日
読了日 : -
本棚登録日 : 2018年12月23日

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