下から目線で読む『孫子』 (ちくま新書 856)

著者 :
  • 筑摩書房 (2010年7月7日発売)
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本棚登録 : 68
感想 : 12
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『孫子』のことばを引用し、それについての著者自身のエッセイがつづられている本です。

本書の前書きにあたる「買おうか買うまいか迷っておられるひとに」で著者は、「『孫子』というテキストを、勝つためのノウハウを説いたものとしてでなく、うまく負けるための心構えとして読み替えてみたい」と述べていますが、そうした観点から『孫子』を体系的に解釈しているわけではなく、「せいぜい『孫子』をネタにした雑文といったところである」と著者自身が述べるように、かなり自由に書かれたエッセイ集といった印象を受けました。

「卒は善くしてこれを養わしむ。これを敵に勝ちて強を益すという」という章句をめぐる説明では、「相手に勝つことによって自分の強さが増すというのは、……自分とは異なる価値観を受け容れることによって「多様性」が増すという質的な変化のほうが大きいんじゃないだろうか」と述べられています。また、「寡なきものは、人に備うるものなればなり。衆きものは、人をして己に備えしむるものなればなり」という章句については、「コレを読みながら、アレも考えているという「ながら」流のほうが好きである。一点に集中しようとすると、たいてい失敗する」と著者自身の立場が語られています。

このように、現代的な観点から自由に著者自身の考えが提示されており、それなりにおもしろく読んだところもあったのですが、「わたしは妻と娘とに対して連戦連敗である」といったユーモア・センスがくり返されて、個人的にはやや鼻白むところもありました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 文学研究・批評
感想投稿日 : 2023年3月24日
読了日 : -
本棚登録日 : 2023年3月24日

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