日本を滅ぼす「自分バカ」 (PHP新書 590)

著者 :
  • PHP研究所 (2009年4月16日発売)
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本棚登録 : 93
感想 : 15
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誰も彼もが「自分」に酔っていると著者はいいます。現代の日本は、尊大な「自分様」たちの百鬼夜行の相を呈しており、ひたすら「自分らしさ」を追い求める者、周りの迷惑を顧みず「自分は正しい」とわめく者、こんな「自分」に誰がしたと食ってかかる者、等々といった「自分様」たちの姿を、さながらアホの見本市のごとく並べた本です。

初めのうちはおもしろく読んでいたが、いい加減くどすぎると感じました。「だから何なの」と言いたくなってしまいます。

それでも、著者の考えが愚直なほどまっとうだということは、認めなければならないように思います。誰も彼もが誇大な絵空事の「自分」を押し付けあっていますが、世界のどこに行っても通用する「自分らしさ」を作るに方法は、(1) 考えること、(2) 実行すること、(3) ひとつのことに十年間打ち込むことの3つだと著者は言います。自分は「みじめだ」とか「さびしい」とか「負けた」とか「だれもわかっちゃくれない」と追い込むのではなく、「みじめ」とはどういうことか、「みじめ」だからなんなのかと考え、「よし、こうしよう」と決心したら、少しでも実行し、実行できなかったらなぜできなかったのかをここでも考えることを、著者は提案しています。そして次に著者は、継続することの重要性を指摘します。もし挫折してしまったら、そこからまた立ち上がればいいとも述べています。それでもまた挫折するかもしれませんが、そのつど限界点が延びていきます。そして、この3つを他者との関係のなかでおこなうことが忘れられてはならないと、著者は述べます。

これはたしかにその通りとしか言いようがありません。これに比べるならば、世間の「自分らしく生きたい」という声など、洟を引っ掛けるにも値しないだろうと思います。そして、どこまでもまっとうなだけの本書は、やっぱり少しばかり退屈に感じてしまいます。もちろん、本書がおもしろいだの退屈だのとあげつらうことは、まっとうに生きることに比べれば瑣事にすぎないのでしょうが。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本の小説・エッセイ
感想投稿日 : 2018年4月30日
読了日 : -
本棚登録日 : 2018年4月30日

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