久しぶりに出会えてよかったと思える洋書。途中なんども涙した。
ラストは少し都合よく終わりすぎな感もあったが、それよりも作者が伝えたいメッセージが強く残った。「困難に直面した時に人はどうあるべきか。」まさに題名そのままのメッセージだ。レースは人生の比喩。雨の中でのレースとは、人生で苦境を強いられるその時。主人公であるDennyはプロのF1レーサーを目指しているので、これだけではなく、作中には人生をカーレースに例えた格言が多数でてくる。いくつも心に残る言葉があった。
また、この物語の最大の特徴は、物語がDennyの愛犬のEnzoを通して語られるという点。Enzo自身は、たまたま犬に人間のような言語を操る舌や器用な手先がないだけで、中身は人間と同等だと思っているようだが、いかにも犬らしい視点での描写が時にユーモアを生み出している。そして時に、人間の中にある弱さや醜さを容赦なく暴いてしまう。Dennyのいつも傍らにいるEnzoはDennyの一番の理解者であり、人というものの鋭い観察者だ。
物語を通して、主人公のDennyを襲う困難は読んでいて胸が痛くなるほどだ。でも、楽な道を選んでしまいそうなとき。誰がどう考えても行き詰まりだろうというとき。そこでまだレースを降りない強さを、その心の在り方を、そしてそれを思い出させてくれる愛犬との絆を。それらがいかに尊いものなのかをこの作品は教えてくれる。私にはその強さがあるのかな、と考えさせられもした。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
洋書
- 感想投稿日 : 2017年1月24日
- 読了日 : 2017年1月23日
- 本棚登録日 : 2017年1月24日
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