鬼がつくった国・日本(にっぽん)―歴史を動かしてきた「闇」の力とは (光文社文庫 こ 16-1 NONFICTION)

  • 光文社 (1991年11月1日発売)
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感想 : 10
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歴史とは権力者=勝利者から見たものである。なぜなら権力に屈した者や排除されてきた者=敗者は歴史を残すことができないからだ。そのような敗者は歴史の中で「鬼」と呼ばれてきた。本書では,民俗学者と写真家のふたりが対談を通じて,そのような「鬼」たちこそが実は日本の文化を生み出し歴史を築き上げてきたのだと論じている。

本書では幾つかの側面から鬼について語られている。鬼とは何なのか,そして鬼は社会の中でどのような役割を果たしてきたのか。権力者に敵対し敗れた者たちは社会の周辺に排除され,やがて鬼と呼ばれるようになる。主流をはずれた彼らは独自のネットワークを築き,商工業などで力を蓄えていく。一方で権力者たちは,鬼のネットワークを利用すべく彼らとさまざまにかかわってもいく。

本書では,著者のふたりが上述のような議論を進めていく中で多くのエピソードを紹介しているのだが,それらは(今までにあまり知らなかったせいもあって)非常に興味深かった。また,本文の対談だけでなく,カラーページに収められた写真を眺めるのも面白い。ワラ人形や写真に五寸釘が打たれている写真を見たときには多少なりともゾクっとした。

しかしながら,対談集という性質上,内容にあまりまとまりがない感じがあるのは否めない。話の脱線などによって本筋が分りにくくなっている箇所や,説明が不十分に感じられる箇所も多々ある。本書の内容に関心を持った読者は,本書が扱う風俗や歴史をもう少し体系的に解説してある本へと読み進めるのが良いのかもしれない。その意味では(著者の著作目録ではなく)参考文献などが上がっていれば良かったように思う。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2012年9月10日
読了日 : 2012年9月10日
本棚登録日 : 2012年9月10日

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