本書は、身の回りの出来事を題材に、戦略的にどのような背景があるのか、それらを一つ一つ解き明かしながら、戦略的思考とは何か、を解説している本である。
「戦略的思考」というのは、今までの競争を全く違う視点で評価し、各人の強み、弱みを分析して、他の人とは全く違う努力の仕方やチップの張り方をすることだと筆者は言う。
「戦略的思考」をするためには、メソッドや理論を学んだだけでは身につかず、それを実際に用いて実戦経験を積み、成否を検証するプロセスを何度も経験することが肝要と説く。
加えて、典型的な手法や古典的な思考による「戦略」は、すぐに共有されその戦略の賞味期限が失われてしまうという「戦略のパラドックス」に陥るため、通り一遍のありふれた考え方ではなく、少し違う角度で世の中を見たり、もう少し深い部分や裏の面まで追求しようという思考態度がなければ、本当に効果のある戦略を生み出すことはできないと主張する。
本書で展開されているように、身近な出来事や日々のニュースに対して、「戦略的に勝つ」方法を考える疑似トレーニング習慣を身に着けることで、戦略的思考を自分のものにすることができるとしている。
本書のこの主張内容は、先に読了した『戦略「脳」を鍛える(御立尚資)』の中で「よい戦略には、定石にプラスアルファされたインサイトがあ」り、「定石を超えた戦い方のイノベーションこそが戦略の本質である」という内容と共通した考え方であり、「戦略的思考と何か」の答えがあるように思う。
『戦略「脳」を鍛える(御立尚資)』が戦略的思考の型と解説、戦略駅に考えるプロセスの追体験に重きを置いているとすれば、本書は、身近なニュースや企業活動、政治経済の動きを戦略の見地から、裏側の種明かしをしてくれる本だと感じました。
追記
よくマッキンゼー出身の著名人が言う「フレームワーク」というのは、「考え方」「思考法」ということではないだろうか。
- 感想投稿日 : 2021年1月3日
- 読了日 : 2016年10月2日
- 本棚登録日 : 2021年1月2日
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