戦略「脳」を鍛える―BCG流 戦略発想の技術

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  • 東洋経済新報社 (2003年11月27日発売)
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感想 : 13
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よい戦略を立案するためには、所謂、ポーターの戦略論に基づく定石にプラスアルファの能力を身に着ける必要がある、と著者はいう。
多くの人が戦略論を学んでいるにも関わらず、立案された戦略の成否が分かれるのは、そこに何らかの違い生じていることは、読み手としても納得できる。
この違いを生み出すプラスアルファの能力のことを著者は「インサイト」と呼んでおり、「勝てる戦略の構築に必要な頭の使い方、並びにその結果として得られるユニークな視座」と定義している。

本書では、インサイトを導くための考え方を公式という形で説明しているが、公式を丸暗記したところで、勝てる戦略が構築できるものではなく、公式をもとにインサイトにつながる頭の使い方を鍛えていかなければならないとしている。これは、いわば職人芸のようなものだという。

この職人芸の追体験ができるよう、著者の戦略立案プロセスにおける頭の使い方が1つの事例に沿って紹介されており、ノウハウ本ではなく「考え方を学ぶ本」となっている。十数年前に書かれた本であることから、事例の中で導かれたインサイトが今日的なマーケットに受け入れられるかは別ではあるが、勝てる戦略立案の「考え方」を鍛えることは競争社会における不変の武器になるであろう。

最終章における「多様性からの連帯」は全体を通して「鍛える」という視点とは異なるが、同質集団ではなく異質なものの組み合わせ、知恵の交流が強い戦略構築チームには必要であると説いている。

『知性を磨く~「スーパージェネラリスト」の時代 (田坂広志)』の中でいう「個別の専門知性の垣根を越えて統合する「統合の知性」がこれからの問題を解決するであろう、という発想に通じるものがあると感じた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 考え方を学べる
感想投稿日 : 2021年1月2日
読了日 : 2021年1月2日
本棚登録日 : 2021年1月1日

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