実存から実存者へ (講談社学術文庫 1257)

  • 講談社 (1996年11月1日発売)
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哲学書。
内田樹氏の著書から導かれて。
哲学は不変的な人間の論理を追求したものだが
しかし、その哲学者が置かれた環境からの影響は大きい。
エマニュアル・レヴィナスは
ユダヤ人としてアウシュビッツ収容所にいた。
家族はほとんど殺されたという。
レヴィナス自身は生を得た。
そして、この著書のほとんどが
そのアウシュビッツで書かれたものだという。
これは希望をもちにくい状況下でありながら
第二次世界大戦を超えて新たな人間のあり方を
問うた書であるといえる。

以下は書き抜き。

存在とは、存在するという禍いなのだ。

実存は、自分の実存の旅をもつれさせる重み--
それが自分自身にほかならないとしても--
を引き摺っている。

怠惰が、何かに対して無力な歓びのない嫌悪であるかといえば、
それはこの重荷としての実存なのだ。

怠惰は、未来に疲れることだ。

努力は疲労から沸き立ち、疲労の上に崩れ落ちる。
努力の緊張と呼ばれるものは、
飛躍と疲労のこの二重性からなっている。

努力は演戯を排除する。

努力とは瞬間の成就そのものなのだ。

疲れるとは、存在するのに疲れることだ。

愛の特徴は、それが本質的で癒しがたい
飢えだということである。

夜の恐怖は仮借ない実存なのである。

実存者とは、意識なのだ。

現在とは、実存者がいるという事実そのものなのだ。

(実存者の)解放のためには、時間と〈他人〉が必要なのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 思索
感想投稿日 : 2011年3月19日
読了日 : -
本棚登録日 : 2011年3月19日

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