ジャン・ルフラン『十九世紀フランス哲学』白水社文庫クセジュ、読了。華々しいフランス現代思想に比べると19世紀のそれはナイーヴで、同時代ドイツに比べれば貧しいイメージだが、いやいや、とんでもない。19世紀こそ現代人がイメージするフランスの出発点。思想家は現実と理想と格闘していたのだ!
華麗で猥雑な、そして残酷な19世紀フランス。大革命の解釈とマテリアリスムへの対応が課題となる。本書はヴィクトル・クザンとオーギュスト・コントを導きの糸にしながら、思想家群像を描き出す好著。二百頁足らずの小著ながらその情報量に圧倒される。
訳者あとがき(川口茂雄)で日本思想史との関連の言及有り。第三共和制初期に留学した中江兆民は『理学鉤玄』(1886)で当時のフランス思想界の様子に言及。
「……撰択説(エクレクスチム)は法国ウイクトル、クーザンノ定ムル所ニシテ、諸家ノ説ヲ採択シ裁緝シテ以テ説ヲ為ス者ニシテ近時法国学官ノ虚霊説(スピリチュアリスム)正サニ是レナリ……」。
兆民は他にもジュフロワやフランクにも言及。本書を通し大先輩の仕事にも新しい光が投げかけられるかも。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
フランス現代思想
- 感想投稿日 : 2014年6月11日
- 読了日 : 2014年6月11日
- 本棚登録日 : 2014年6月11日
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