日本文学盛衰史 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2004年6月15日発売)
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「文学」という不動の星のもと、明治時代の文士らの盛衰を、時空を断ち切りながら短い断章で語り継いでいく壮大な物語。当時を彷彿とさせ、ロマンあり、涙あり、笑いとナンセンスたっぷり、さすが高橋さん、見事な仕上がりです♪ 

冒頭は「死んだ男」の巻。大文豪、二葉亭四迷の葬儀の受付をしていた石川啄木、会葬者には夏目漱石や森鴎外など多数列席……そんな若き貧窮文士石川啄木のローマ字日記なるものは異様に読みにくいのですが興味深く……自由民権活動家の幸徳秋水の「大逆事件」をうけて、日本帝国の謀略に、さらには権力に敏感であるはずの文学の頽廃に怒り心頭に発した啄木は、大論考を書いて朝日新聞の漱石に発刊を依頼するのですが……一方当時の文壇は自然主義を謳歌しているころ、島崎藤村や田山花袋も登場します。花袋のパロディはやはりエロい(笑)。自然主義に辟易して独自の路線を歩んだ柳田国男の妖怪パロディがないのはちょっぴり残念~。

「原宿の大患」の巻は、語り手「わたし」の胃潰瘍大出血の顛末。漱石の「修善寺の大患」のパロディで、まぁ~生々しい写真つきで痛々しいのですが、ほんとに可笑しくて、ごめんなさい、大笑いしてしまいました。
「WHO IS K」は雰囲気変わって真面目の巻です。漱石「こころ」に登場する「K」は実在した人物なのか? それは一体誰? ミステリー仕立でハラハラドキドキ、結末はひんやりと身も心も粟立つ……冷

それにしても高橋さんは無類の漱石ファンで、彼の作品のここかしこに漱石キャラや漱石作品がちりばめられていて楽しいですね。また二葉亭四迷の日本人と文学の切ないつぶやきや、ひたすら純で世渡り下手な貧乏青年啄木の哀切……。
明治時代の文士のキャラをうまくつかんで、史実と虚構を綯交ぜにしながら、パロディと諧ぎゃくを巧みに織り込み、「日本文学」をまじめに遊びたおしています! 

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感想投稿日 : 2017年3月9日
本棚登録日 : 2017年2月25日

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