江角直樹は、人気イラストレーター・執行光彦のアシスタントのバイトをしている。
自身も執行の絵に憧れて美大を目指すもすべて落ち、執行のアドバイスに従い美術系の専門学校に入学を決めたばかりの十八歳。
ところが、執行の家へと急ぐ途中、その大事な入学金と授業料である50万円を落としてしまった。
青くなる直樹だったが、支払いの期限は二十日後。
何のとりえもない自分にはそんな大金を準備するのは不可能だと思いどうしたらわからずにいた。
そんないつもと様子が違うことを執行に突っ込まれ、直樹はついうっかり本当のことを話してしまう。
しばらく悩んだ末に、執行は直樹に50万円を手渡す。
受け取れないと首を振る直樹に、執行は期間限定の「援助交際」を持ちかける。
突然の申し出に困惑する直樹だったが、他に方法もなく、また「変なことはしない」という執行の言葉に、直樹はその申し出を受け入れる。
その翌日、緊張しながら執行の家を訪ねると、執行はいつもどおりの執行で、直樹は拍子抜けしてしまう。
それから数日、何もないままに時が過ぎ。
執行が自分にしてくることといえば、その残りの2時間で自分を食事に誘う程度――。
緊張だけさせられて、何もない日々に直樹は訳のわからないモヤモヤを抱え込んでしまう。
そんなある日、身内に不幸があったという理由で、仕事が休みになった日の翌日、直樹がいつもどおり執行の家を訪ねると、そこにはいつもと様子の違う執行がいて――
いつもは大人の余裕で直樹に接してくる執行に、幼い子供のようにすがられて、直樹はついついキスを許してしまう。
けれどそのことさえも、執行はなかったことのように振る舞って――
という話でした。
最初は仕掛けられたはずなのに、いつの間にか仕掛けられないことにいらいらし始める直樹のお話でした。
信じられないほどにいい歳した攻めが弱気で。
最後は覚悟を決めた受けに寄り切られてしまう話でした。
なんだか最初の思ってた展開と違う――という。
個人的には、こんな弱気な年上攻めがいてもいいじゃん、とちょっとほのぼのとして苦笑を浮かべてしまったんですが、強気攻めが好きな人とか、はっきりした物語が好きな人にとってみれば、かなりもどかしい話じゃないかな、と思います。
- 感想投稿日 : 2012年11月6日
- 読了日 : 2012年11月5日
- 本棚登録日 : 2012年11月6日
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