楽園のアダム

著者 :
  • 講談社 (2021年9月3日発売)
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本棚登録 : 454
感想 : 48
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“奥歯を噛み締め、闇の中の瞳を睨みつける。
瞳孔が、甲虫の甲殻のようにころころと色を変え、煌めいていた。不吉な気配とは対照的な、不謹慎なほどの美しさだ。
(p.105)”
“こいつは殺人鬼だ。僕の愛する人と世界を山ほど奪った仇だ。憎くて憎くてたまらない敵だ。なのに、なぜ——。
この美しい禍々しい瞳こそが、自分の求めるものだと思ってしまった?
(p.297)”

 珍しい謎をテーマにしたミステリーだった。つまり、殺人者は「何」で、世界の歪みは何処にあるのか…

 疫病の流行により1%にまで減少してしまった人類。生き残った人々は、それぞれが生まれた時から与えられた役目を果たし、人工知能の統括下で穏やかな日々を享受していた。しかし、平和な“珊瑚礁の島”を襲う、起こるはずのない連続殺人事件。島の外から持ち込まれた残虐な怪物とはいったい何者なのか?


※ネタバレしてます!







 差異は、確かに争いの源であるが、同時に活力を生み出すというのは真実だろう。在るはずの差異がなくなって、仕方なく導入された偽りの差異。それは一つの知恵ではあったが、熱帯の「楽園」は、人々が必死に隠し、忘れようとした、世界の歪みから手痛いしっぺ返しを喰らったのだった。
 …とまとめればとても綺麗な話なのだけど、ところどころ腑に落ちない。このユートピア(あるいはディストピア)のリアリティについて。「男女」の性差は社会的なものであるからそれはいいとして、筆者は、女性同士の争いは全て男性の存在が原因であり、従って男性がいなくなればみな理性的でいられる、と言うのだろうか。
 そして、男としてこれはどうしても言わせてもらいたいが、世の中の男は、決して、女を見ると見境なく襲いまくる野獣ばっかりじゃありません!笑

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 9 文学日本
感想投稿日 : 2023年10月1日
読了日 : 2023年9月21日
本棚登録日 : 2023年9月22日

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