獣の妻乞い (リンクスロマンス)

著者 :
  • 幻冬舎コミックス (2008年1月1日発売)
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本棚登録 : 246
感想 : 27
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そういうタイプの作家さんじゃないのは薄々わかってはいたけれど、甘い人外ファンタジーかと思いきや全然違った…うわーん(泣)
時は一応近未来なのかな? 死刑制度が廃止され、刑務所は慢性的にキャパオーバー。犯罪者たちは短い刑期を終えてすぐに社会復帰し、再び犯罪を繰り返す。そうした人間を人知れず始末するため立ち上げられた極秘国家プロジェクト。遺伝子操作によって生まれた人外生物。人間と狼の遺伝子を持ち、時に獣化して法制度では罰しきれない人間を密かに抹殺する。彼らは猟獣と呼ばれている。
ある日高校生の尚季の前に現れた“飛月”という青年。野性味あふれる美しい外見とは裏腹に子犬のような人懐っこさで、一方的につきまとってくる。
困惑する尚季をよそに家に居座ってしまった飛月を訝しく思いながらも、いつしか一心に自分の愛情を乞う姿にほだされ、戸惑いを愛情に変えていく。
飛月にとって尚季は猟獣施設から脱走した折、交通事故に遭い死にかけていたところを助けてくれた命の恩人。みつかって連れ戻されるまで、一緒に過ごした時間は短かったけれど、尚季はありったけの愛情を注いでくれた。それ以来飛月にとって尚季は生きる理由になっていた。再び尚季と会うために、無理を重ねてきた飛月。トップの猟獣だけに許される“自由”を手に入れるために。
人から獣へ、獣から人へと変身を繰り返すうちにかかった負荷は、いつか脳の機能を破壊していく。猟獣たちを待ち受けているは、いつか完全に獣へ堕ちてしまう運命。
終盤、私自身にとってかなりハードルが高い獣姦シーンが登場するが、ストーリー上必要なプロセスだと納得はできる。
最終的に、猟獣を引退し尚季に引き取られることを許された飛月。これまでの過酷な日常を埋め合わせるような安寧で甘やかな生活。
でもなぜだろう。その甘さに浸りきれない。
この先いつか訪れてしまうかもしれない、飛月が獣に堕ちる日。
その時が来たら、自分がこの手で飛月を殺す。誰にも奪わせないという誓い。
その日はいつやって来るのか誰にもわからない。
それはなんて危うい。
まるで薄氷の上に立つみたいな幸せなのだから。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ファンタジー・パラノーマル
感想投稿日 : 2013年2月10日
読了日 : 2013年2月10日
本棚登録日 : 2013年2月10日

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