教養としての「ローマ史」の読み方

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  • PHP研究所 (2018年3月20日発売)
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「ローマ帝国滅亡の原因」をこの本では、いくつもの事象が折り重なって起きたであろうという事から、交響曲の様だとして述べている。
大きくは、3つ。経済の衰退、国家の衰退、文明の変質。

「経済の衰退」では、メインに奴隷を据えて、戦争によって得た時代から、捨て子などによる供給、人口減少から一般人が小作人として使われ農奴となって行ったと。また、合わせてインフラの劣化、これは過去には貴族による出資で成り立っていたものが、労働力の枯渇で衰退。

「国家の衰退」では、宗教を利用した権威付けから、軍に殺生与奪を握られ、辺境からの圧力への対応としての戦費と増税を繰り返して体力を落とし、曖昧な国境と異民族の軍への編入、ゲルマン人の大移動を許した。

「文明の変質」では、「ポリス市民の多神教文明」から「コスモポリタンの一神教文明」への移行。ストア派は神は人間社会に介入するという考え方で、この思想がキリスト教との共通点があった。弱者救済の考え方のこの宗教が広まったのは、ローマ人の多くが弱者へと変質して行ったのかも知れないからだと。

この論を読むと、今の世界、日本と重なってイメージ出来るような気もするが、そもそも筆者のバイアスがかかっている可能性もあるし、国家の滅亡の普遍的な要素の気もする。

ここから、読者はどう考えるべきか?


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感想投稿日 : 2019年4月9日
読了日 : 2019年4月9日
本棚登録日 : 2019年3月28日

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