1979年上半期芥川賞受賞作。東京の現在と過去のパリとが交錯しつつ語られる。作者自身の経験とまったく同じであるとは思わないが、その時々の感情のありかはこのようであっただろう。その意味では、多分に私小説的な作法だ。まだしも希望や展望がかろうじてあったパリと、主人公自身の将来や妻のジニーとの結婚生活もことごとく閉息状況に置かれている東京での暮らし。彼らはともに漂泊者にもなれないし、ましてや定住者たることもできない。そうした打開策のなさこそが本編のテーマなのだから、エンディングは別の形があり得たのではないか。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
☆日本文学
- 感想投稿日 : 2013年9月26日
- 読了日 : 2013年7月31日
- 本棚登録日 : 2013年9月26日
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