銀河鉄道の父

著者 :
  • 講談社 (2017年9月13日発売)
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本棚登録 : 2239
感想 : 356
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宮沢賢治の生涯を父の目線から描いた本作。
正直、この本を読むまで宮沢賢治がどんな人生を歩んだのか考えたことすらなかった。
教科書に載っていたいくつかの作品と、個人的には「銀河鉄道の夜」を読んだことがあるだけだ。
原文のままだと子どもだった私には難解に思え、大人になると童話作品に興味を持てずにいた。

これだけ有名な作家なのになぜここまで興味を持てなかったのか考えてみると、勝手に描いていた賢治像のせいかもしれない。
貧しい農民のために尽力した聖人君子のような人。
これが私の賢治に対するイメージである。
「雨ニモマケズ」ってなんだか説教臭い。そんな思いで敬遠していたのかもしれない。

で、この本。
いやまるで違うじゃないか!
金持ちのボンボンで苦労知らずな我儘息子。
勉強はできるけれど、自活できない脛かじり。
生涯モラトリアムだったんじゃないかと思うほどひどい。
そんなダメ息子の才能を信じ、支え続けた父がすごい。
フィクションの部分が多いにしても、生前まるで本が売れなかったにもかかわらず作品を創作し続けることができたのは、まぎれもなく父親の経済力あってのことだろう。

こんな賢治の姿を知ってがっかりしたかというと、まったくそうではなかった。
聖人君子だった賢治が一気に身近な人間としての賢治となった。
さまざまな葛藤を抱えながら生きた賢治、その生々しい姿を想像しながら改めて「雨ニモマケズ」を読んだ。
やだ、「雨ニモマケズ」読んで涙出ちゃったの初めてよ。
そうか、そうだったんだ。そう言うことなのねって勝手に解釈して納得。

この本一冊で宮沢賢治を分かったつもりにはならないけど、もっと読みたいと思う気持ちが俄然出てきた。
さて、何から読もうか・・・。
門井慶喜さん、ありがとう。こんなに分かりやすく小説にしてくれてありがとう。感謝です。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2017年12月1日
読了日 : 2017年11月24日
本棚登録日 : 2017年12月1日

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コメント 2件

nejidonさんのコメント
2017/12/01

vilureefさん、こんにちは♪
またお会いできて嬉しいです!!!
ところで、珍しい選択だわと思いながら読みました。
そうかー、そういう訳だったのですね。
思い込みあるある、ですね。
確かに宮沢賢治は一部のコアなファンの方に過剰に神格化されていて、正直な感想を述べにくい部分があります。
特に現国の教師の中にファンが多くて、それでよけいに困ります(笑)。
どうしてこんなこと書くかなぁ、意地悪だなぁというような作品もたくさんあるのです。
(私はそれで、宮沢賢治よりは新美南吉の方が好きなのですよ。)
作品からすると、かなり偏屈なお坊ちゃんではなかったかと、秘かに思っておりましたわよ。
vilureefさんの見方を変えたこの本を、ぜひ読んでみたいものです。

vilureefさんのコメント
2017/12/02

nejidonさん、こんにちは(^.^)
コメントありがとうございます。

私のような者が宮沢賢治について語るなんておこがましいんですが…(^_^;)
逆に何も知らないからこそ良かったのかもしれませんね。興味を持つきっかけになったので。

新美南吉!彼こそ童話作家ですよね!
ごんぎつねと手袋…くらいしか知らないなぁなんて思っていたのですが知らぬ間に読んでいますね。
つい最近息子に赤いろうそく読み聞かせしました。二人でほっこりしましたよ。
nejidonのおっしゃることよくわかりますよ。

宮沢賢治は子供目線の童話作家というより、文学者ですよね。たまたま表現する場所が童話だったという感じで。
付け焼き刃で語っても説得力ないですが(笑)

nejidonさんの感想も聞きたいです。
楽しみにしていますね♪

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