宮沢賢治の生涯を父の目線から描いた本作。
正直、この本を読むまで宮沢賢治がどんな人生を歩んだのか考えたことすらなかった。
教科書に載っていたいくつかの作品と、個人的には「銀河鉄道の夜」を読んだことがあるだけだ。
原文のままだと子どもだった私には難解に思え、大人になると童話作品に興味を持てずにいた。
これだけ有名な作家なのになぜここまで興味を持てなかったのか考えてみると、勝手に描いていた賢治像のせいかもしれない。
貧しい農民のために尽力した聖人君子のような人。
これが私の賢治に対するイメージである。
「雨ニモマケズ」ってなんだか説教臭い。そんな思いで敬遠していたのかもしれない。
で、この本。
いやまるで違うじゃないか!
金持ちのボンボンで苦労知らずな我儘息子。
勉強はできるけれど、自活できない脛かじり。
生涯モラトリアムだったんじゃないかと思うほどひどい。
そんなダメ息子の才能を信じ、支え続けた父がすごい。
フィクションの部分が多いにしても、生前まるで本が売れなかったにもかかわらず作品を創作し続けることができたのは、まぎれもなく父親の経済力あってのことだろう。
こんな賢治の姿を知ってがっかりしたかというと、まったくそうではなかった。
聖人君子だった賢治が一気に身近な人間としての賢治となった。
さまざまな葛藤を抱えながら生きた賢治、その生々しい姿を想像しながら改めて「雨ニモマケズ」を読んだ。
やだ、「雨ニモマケズ」読んで涙出ちゃったの初めてよ。
そうか、そうだったんだ。そう言うことなのねって勝手に解釈して納得。
この本一冊で宮沢賢治を分かったつもりにはならないけど、もっと読みたいと思う気持ちが俄然出てきた。
さて、何から読もうか・・・。
門井慶喜さん、ありがとう。こんなに分かりやすく小説にしてくれてありがとう。感謝です。
- 感想投稿日 : 2017年12月1日
- 読了日 : 2017年11月24日
- 本棚登録日 : 2017年12月1日
みんなの感想をみる