冬の蜃気楼

著者 :
  • 新潮社 (1992年11月1日発売)
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感想 : 4
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つい先日テレビで放送されていた山田太一の回の「おやじの背中」。
たまたま見ていたけれど最後まで見られなかった。
台詞とか間合いとか今の時代にはそぐわない感じがして。
そういや、昔のドラマってこんな感じだったかな。
一世を風靡した人気脚本家でもこんなもんかぁ。

そんなことがありつつもこの小説を読んでみた。
角田さんのエッセイで力を入れて書いてあったからだ。
いやいや、なんのなんの、面白かったですよ。
一気に読んじゃった。
山田太一の自伝的な要素もあるのかずいぶん時代も遡るけれど、それがかえって良かったのかも。

駆け出しの助監督と、中年の大根役者、可憐な新人女優が主な登場人物。
物語は一貫して助監督の石田の目線で描かれているのだが、若者特有の青臭さと傲慢さがにじみ出ている。
その上に自分でも持て余すほどの自意識。
周りにも振り回されっぱなしで痛々しいほど。

で、良くある青春ものなのかと思って読み進めて最終章。
いきなりの33年後。
いやー、やられました。
なるほどね、タイトルの意味がここに来て分かった。
個人の記憶なんてあいまいなもの。
良くも悪くも自分の中でかきかえられて次第に肥大していく。
一体真実はどこにあるのか。
いやはや空恐ろしい小説だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2014年9月16日
読了日 : 2014年9月16日
本棚登録日 : 2014年9月16日

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