理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ

著者 :
  • 朝日出版社 (2014年10月25日発売)
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本棚登録 : 731
感想 : 73
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 打ち合わせ・会議・対話をよくする人に読んでもらいたい本である。どうして議論は紛糾するのか。その本質が見えてくる。
 進化。科学者が探究するも結論が出ていない。その背景について述べた本である。
 新商品/新サービス/新事業企画、研究開発。新しいものを生むことを生業にしている。もしくは関係しているのであれば、読むと良いと思う。
 本書の言う「理不尽」とは何か。これは99.9%以上の種は絶滅してきている。それも遺伝子の良し悪しではなく不運による。これが本書の主たる主張である。
 ダーウィンの進化論を考える時。私たちは今いる生物を基準に考えがちである。一方、絶滅している99.9%以上の種がある。大絶滅が5回も生じている。そちらからの視点で見る。この方が自然であると感じた。
 また、生物が複雑な目的を持って複雑なものに進化したと考えがちである。上記の通りほとんどの種は絶滅しておりたまたま生き残ったものが複雑なものだったということである。
 また適者が生存する訳だが適者の基準も不明確になりがちである。これもメリットから考えがちである。一方、よく調べてみると隠れた制約がありそれに適合しているだけだったりする。
 これを最初に提示した新しいものを作ろうとするビジネスに適応して考える。すなわちほとんどのビジネスは失敗する。たまたまうまくいった例を分析することがほとんどである。
 この本をよむと実はそうではなく制約の方に目を向けるのが良いと分かる。制約自体が時を経て変化する場合もある。見えていないこともある。それを見つけることで生き残る確率を高めることもできるのかもしれない。
 こういう話だとスティーブ・ジョブズが脳裏に浮かぶ。彼が素晴らしいのは他の人には見えていない隠れた制約を見つけ出す能力に長けていたということなのだと思う。
 ボタンを一つにする。無くす。ペン型のポインティングデバイスは廃して指だけで操作する。今となっては当たり前だが誰もそれが重要だとは気が付かなかった。
 進化の場合は紙はサイコロを振り続けている。一方、こういう天才は裏のロジックを知っている。つまりサイコロをふるのをスキップして結論に達せられる。そういうことなのだろう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年11月11日
読了日 : 2022年11月11日
本棚登録日 : 2020年1月26日

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