第一部完結作である本著は、もっともアーヴらしさが描かれた作品でした。アーヴらしさとはつまり、アーヴの価値観や考え方についてです。
アーヴは自らの故郷を滅ぼした親殺しの原罪を持つ種族です。それ故に、彼らは誰かに覚えてもらう、覚えておくということを強く意識しているように見受けられます。
英雄芳名碑の一連の流れはその象徴的な描写でした。歴代の戦没者名をすべて記している英雄芳名碑の存在。帝都が滅ぶさなかにあってもそれを守り抜こうとするアーヴの意志。忘れじの広間管理官エーフとジントの対話。
英雄芳名碑はそれそのものも大事ですが、ただのモニュメントとして重要なのではなく、そこに記憶が付随しているからこそ(場合によっては記憶そのものが主たりえるものとして)重要な存在なのだという事が分かります。
ジントやラフィールなど、中心人物の描写こそ少ない本著ですが、帝国の転換期を描く上で欠かせない重要な話でした。
第一部は完結し、これからのアーヴの歴史は新しい世代へと引き継がれていきます。
第二部が出るのは果たして何年後のことか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
SF
- 感想投稿日 : 2013年4月10日
- 読了日 : 2013年4月10日
- 本棚登録日 : 2013年4月10日
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