平安貴族とは何か 三つの日記で読む実像 (NHK出版新書 707)

著者 :
  • NHK出版 (2023年10月10日発売)
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感想 : 12
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大河ドラマ「光る君へ」の時代考証を担当されている倉本一宏先生の本。先生の専門である平安時代の日記「御堂関白記」「権記」「小右記」について解説されている。
大河ドラマはドラマとして楽しんでいるので、こうして実際の平安時代にはどんな記録が残されているのかということを知りたかった。最初の本として読んで本当に良かった。
今までは平安時代と言ったらその風俗や女流文学から切り込んだ文献を読んでいた。こうして政治の中枢にいた権力者たちの日記から見えてくるリアルな時代も面白いなと。日記を残すことで子孫が権威を保てるようにしたという、なんとも政治的な理由も面白いが、普通にその内容が興味深かった。
ハイパーウルトラブラック官僚として有名な藤原行成の実際の業務は文字で読むだけでも胃が痛くなる。一条天皇を脅して一帝二后を認めさせたりとか、危篤の一条天皇を脅して定子が産んだ敦康親王ではなく彰子が産んだ敦成親王を東宮にするよう迫ったりとか……夜中まで彼が仕事をしていたことは知っていたがその内容もエクストリームだ。こんなブラック業務をこなしながらあんなに美しい字を書く藤原行成、推せる。

倉本先生の語り口もとても軽妙で入門としてとても楽しく読ませていただいた。

"NHKの大河ドラマ「光る君へ」が、紫式部と藤原道長を主人公にするという発表があり、(中略)面倒な仕事だなと思いながらも、これは平安貴族の実像を世間に知らせる最後のチャンスかもしれないと心を奮い立たせ、大河ドラマの仕事を引き受け、この本も出版していただくことにした次第です"

という「はじめに」に書かれている先生の文に惹かれたら是非読んでいただきたい。

私自身平安時代の文化や文学が好きすぎて「私が考えた最強の平安時代」というものを若い頃に新書や国語便覧のカラーページを読んで作り上げてしまったところがある。だからこそもう一度この平安時代という時代に対してどんな研究がなされているのか詳しく知りたいという気持ちになった。倉本先生の他の本は勿論、他の研究者の本も読んでみたい。服藤早苗先生の本も読み返したい。

最後の章が藤原実資の「小右記」について書かれていることも納得。中世の武家社会に繋がる歴史の流れは、当たり前に平安時代の摂関政治にあったのだな。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年1月27日
読了日 : 2024年1月27日
本棚登録日 : 2024年1月15日

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