新装版 ムーミン谷の彗星 (講談社文庫)

  • 講談社 (2011年4月15日発売)
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本棚登録 : 2335
感想 : 220
5

無邪気で朗らかな反面、根底に横たわる不安感を無視できない。
それぞれブレないキャラクターを持ちつつも、悩みうろたえ動揺する姿がとても人間的。
平和で優しさに満ちた世界に見えるけど、意外と登場人物たちは冷めているよう。
例えば、自己肯定感が低くわがままばかりのスニフに手を差し伸べたり咎めたりする者もなく、まさに彗星迫る中でのママの愚かで呑気な行為を諭す者もなく、基本的にみな他人に強いて影響を及ぼそうとしない。
自分は自分、他人は他人、干渉せずという思想が、可愛らしいキャラクターたち全員に備わっているように思う。
そのアンバランス加減が世界から愛される理由なのかしら、と思った。
そんな奇妙な魅力がクセになる。
また、おしつけがましい訓戒が込められているわけでもなく、ただ日々が記録されているような淡白さも気に入った。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 父の書庫
感想投稿日 : 2018年9月3日
読了日 : 2018年9月3日
本棚登録日 : 2018年9月3日

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