夢の本 (河出文庫 ホ 5-4)

  • 河出書房新社 (2019年2月5日発売)
3.46
  • (4)
  • (8)
  • (11)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 389
感想 : 16
5

書物の王国「夢」の後はやはりここに落ち着いた。ナイトキャップ姿で眠っているキャラクターがかわいい。300頁ちょっとでもたいへんボリューミーな夢のアンソロジー、全113篇。
ところでなかなかいいお値段。河出文庫は好きだからいいのだけど、講談社文庫がこれと同程度の規模で同じ値段だったらためらう(レーベル好き嫌い)。

神話、歴史書、小説、評論等々様々なジャンルから夢に関する記述を集めたもの。まとまったボリュームで抜粋されている章もあれば、1行2行程度のまるで箴言のような章もある。自由度と柔軟性、そして何より出典の広範なことで驚かされた。自分が行う本のチョイスからは絶対に辿り着けないであろうものがたくさんある……。これもアンソロジーのありがたさ。
古来より人間が夢に抱く関心の深さには感嘆の一言。古典が直接間接に引かれているおかげで、読みたいものがまた増える(思い出される)。ル=グイン『ラウィーニア』で夢が重要な役割を果たすのもこういうことかとあらためて納得。
聖書からの抜粋はさすがに宗教的な説教臭さを感じて聞き流したくなるのだけど、それ以外はいずれも面白かった。人間が現実を説明する理知、あるいは弄ぶ機知、世界の神秘を解く鍵、もうひとつの現実。
ボルヘス自身の作品では「夢の虎」がひときわ気になる。そしてちょっとだけ「I Dreamed a Dream」を連想する。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: アンソロジー
感想投稿日 : 2021年6月29日
読了日 : 2021年6月11日
本棚登録日 : 2021年6月29日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする