エイリア綺譚集

著者 :
  • 国書刊行会 (2018年11月21日発売)
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本棚登録 : 196
感想 : 4
5

『ゴシック文学入門』のトリが著者だったので、この機会にと積ん読崩し。光沢のあるナイトブルーの函が素敵。中身は軽くもしっかりとした作りで、上品な存在感がある。美しい。
「青色夢硝子」「林檎料理」「憧憬双曲線」「石性感情」「猫書店」「ほんたうの夏」「出勤」「穴のあいた顔」「ブルトンの遺言」「ほぼすべての人生に題名をつけるとするなら」「ガール・ミーツ・シブサワ」を収録。

ひとつひとつが同じスペクトラムのどこか別のところに位置しているイメージ。どれも似たり寄ったりというのではなくて、それぞれ独立した作品でありつつ、そのすべてがどうかすると重なる位相にいて、相互に交信可能であるような。重さ軽さを感じさせるポイントと、その程度のグラデーションがそう思わせるのかなと、のっけの「青色夢硝子」に幻惑された衝撃にふわふわしながら思った。
物語世界、それを知覚する世界、さらに遥かな超現実へ突き抜けていく次元旅行に内臓が浮く「青色夢硝子」、宙を踏むような感触が不思議で楽しい「林檎料理」(大手拓次、ちょっと気になる)、月夜に部屋を訪れていたら、あるいは尚も夢を追っていたらと想像してしまう「憧憬双曲線」等々、どれも味わい深く面白かった。重さ軽さのポイントのひとつであろう筆致も、その時々でけっこう好み。「出勤」の何気ない描写の中の、「これは絶対やばいやつ」感はなんなんだろう(案の定やばかった)。「ほぼすべての人の人生に題名をつけるとするなら」の社会のグロテスクさも。
ちょっと異色な「ガール・ミーツ・シブサワ」は「(色々思うところはあるけど)澁澤龍彥に愛を叫ぶ」。澁澤龍彥を読むのはこれからのいつかだけど、すでに私も思うところはけっこうある。主に矢川澄子とのこと。
「猫書店」にはびっくりした。読んだことあるなと思ったら、別の筆名も使っていたのね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年11月8日
読了日 : 2020年10月31日
本棚登録日 : 2020年11月8日

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