そそられるタイトル。その時はそんな予定はなかったのに偶然見つけて手に取ってしまった。
カテゴライズに困る1冊。小説のような詩のような随筆のような。平凡社ライブラリーとしては「詩のコレクション」らしいのでとりあえず詩集にしてみる。
文語訳の古雅なヴェネツィア頌歌。現在を愛でる眼差しと過去を親しむ幻想が溶けあって、惚れ惚れしてしまう読み心地。
鈴や絵画、窓枠が額縁を成す風景、小説「マルスリーヌ」に出演と思しき人形たちなど、ヴェネツィアを形作るミニチュアの鍾愛にもぐっとくる。またそれを綴る筆致がたまらなくいい。ドツボ……。
「マルスリーヌ」にもヴェネツィアが憧憬の地として登場していたのを思い出す。妻への呼びかけらしい「わが親愛なる軽はずみの女よ」からして、あの作品はもしかして、(おおいに脚色されているとしても)多少なりとも著者の実体験を反映しているのだろうか。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
詩集
- 感想投稿日 : 2021年7月11日
- 読了日 : 2021年7月7日
- 本棚登録日 : 2021年7月7日
みんなの感想をみる