あなたは英語で戦えますか: 国際英語とは自分英語である

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  • 冨山房インターナショナル (2011年9月22日発売)
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 著者は、イングリック(国際英語)のすすめを説いている。今までの英語は英米を向いたもので、英語は国際化して世界中の人が使用するいわば国際語となっている現状に合わせる必要があるとしてイングリックの4つの条件を挙げている。

1. 英語の不規則な変化(動詞や名詞など)を無視する
2. イディオム(慣用表現)は使わない
3. やさしい動詞と前置詞の組合わせは使わない
4. 早口は禁止する
5. 日本人はなるべくyes,noを使わず、質問の動詞を肯定・否定で使う(yes,noは日本語の「はい」「いいえ」とは非常に違うので、誤解のもとになることが多い)

となると早口なハリウッド俳優のクリス・タッカーは、映画に出る時はノンネイディブにも分かるように2倍速ならぬ2倍遅で話すことになる。3単元のSは要らないといわれているのはいいことだ。それにイディオムは使わない。フェイスブックなら「いいね」ボタンをクリックしたくなるような発言だ。知らないイディオムを使われるのはアンフェアなので、英語を母語としない人たちに合わせた英語を話しましょうというのがいい。英米のいわゆるネイディブ・スピーカーの数は英語を離す人の中でマイノリティーなのだから、民主主義の精神に則っていけば多数のニーズに合わせる必要があるのだから。

 本気で国際化したいならマゾ体質からサド体質へチェンジする必要があると著者は述べている。お願いですから聞いてくださいという低姿勢ではなく、「あたしの言うことをお聞き」などと、女王様になってムチとろうそくでビシビシいたぶるつもりで責めることも重要ということか。となると自虐史観でいつまでも金銭を伴う保証をするつもりも無いのに、へこへこと謝罪し続ける国内でしか通用しない「誠実な」やり方も改める必要がある。

 英語、英語とことさらに強調するとかえって英語ができなくなるばかりか、他の外国語に注意が行かなく恐れがあると述べている。そもそも英語はドイツ起源で、その上ノルマン征服でフランスがイギリスを支配した間、フランス語が上流階級の間で公用語として使われた歴史がある。その結果、ゲルマン系とラテン系が入り混じった複雑な言語となってしまったので、英語を知ろうと思ったら他のゲルマン系やラテン系言語と比較した方が分かりやすい。それに、現地の情報を仕入れようと思ったら、英語だけでは得られないことは出てくるので最終的には現地の言語を学ぶ必要が出てくる。

 世界中に日本語を理解できる人材を育成する必要を説いている。そうするには例えば、ODA(政府開発援助)を日本語教育、日本文化の普及に力を入れるために使うのも良いと思う。ただ札束をちらつかせてもろくに感謝されず、ひどい場合には現地の住民の恨みを買うこともあるのだから。

 以前モスクワにある日本大使館は、屋内プールつきの豪華な建物だと避難されていたことを思いだした。そんな金があるなら、イギリスのブリディッシュ・カウンシルのように自国の言語や文化を広める機関を創設して、日本のファンを創ったほうがどれだけためになるか。関係省庁には考えて欲しいものだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2011年11月6日
読了日 : -
本棚登録日 : 2011年11月6日

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