有栖川有栖先生の長編デビュー作。手元にあるのは何年か前、先生の講演会でサインしてもらった記念すべき文庫。
本書を初めて読んだのは20年以上前。登場人物の江神やアリスたちと同じく大学生で、ページをめくるのももどかしい思いで読み耽った。当時は「本格」と聞くだけで興奮するようなミステリおたくだったが、今回、再読してみて驚いたのは…全く内容を覚えていないこと(笑)。最近、以前読んだミステリを読み返すことをしているが、文字通り、私にとってミステリは再読に値するのだ。
本書を一言で表すなら、本格、である。舞台設定は、定番のクローズド・サークル。仕掛けは何と火山の噴火である。最近の話題となった『紅蓮館の殺人』は山火事で隔離されたが、本作はより大掛かりである。そんな極限状態の中で起きる連続殺人事件。
現場には、これまたミステリのど定番であるダイイング・メッセージが残されていた。本書にはその写真も掲載されている(実はこれだけは印象的なので覚えていた。ただし、この写真が本作のものだったことはすっかり忘れていた)。ど定番とは言ったものの、今日日のミステリでこのダイイング・メッセージを好んで使うのは、おそらく名探偵コナンと、エラリー・クイーンを愛してやまない有栖川先生くらいではないかと思う。
謎解きはまさに論理炸裂。クイーンに向こうを張った「読者への挑戦」も興をそそられる。
学生時代、新本格ミステリにはまった経験のある方は少なくないはず。もう一度、昔読んだミステリを読み直すのもオススメ。特に、学生であるアリスたちがミステリ談義に華を咲かせる本書は、かつての学生時代を懐かしく思い出させてくれる。しかも、本シリーズはまだまだ継続中である。乞う新作!
- 感想投稿日 : 2021年1月3日
- 読了日 : 2021年1月3日
- 本棚登録日 : 2021年1月3日
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