ベラスケスの十字の謎

  • 徳間書店 (2006年5月31日発売)
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感想 : 29
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17世紀スペインの宮廷画家ベラスケスの大作「ラス・メニーナス(侍女たち)」にまつわる二つの謎に着想を得た子供向けミステリアスファンタジー。
主人公は「ラス・メニーナス」の右端に描かれている犬(マスティフ犬)に足をかけている少年。彼はニコラスという小人症の少年でその障碍故に父に売られイタリアから連れてこられた。紆余曲折を経て、宮廷画家ベラスケスの工房に出入りするようになったニコラスは、画家が取り組んでいる絵(のちに「ラス・メニーナス」と呼ばれるようになる)の秘密を知ることになる・・・。
「ラス・メニーナス」に描かれている人物についてはほぼ確定されているが、一人だけ顔がはっきりわからない男がいることと、画家本人の胸に印された赤い十字章は後に書き加えられたことがわかっているが、誰が描いたのか不明であるという二つの謎を、ファンタスティックな解釈で解き明かした歴史ファンタジーといえる。宮廷で暮らす人々の様子が、ニコラス視点で生き生きと描かれ、まるで17世紀のスペイン宮廷に入り込んだように感じられて楽しい。
この二つの謎は作家の創作意欲をかき立てるものらしく、以前に呼んだ「赤い十字章」では、本書にも登場する、奴隷出身のベラスケスの助手フアン・パレハの視点で、またちがった十字章の謎解きに迫っている。
大人ならすぐ読めるし、小学生でも中学年以上で読めるのではないか。「ラス・メニーナス」の前に立ってみたくなった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 海外児童文学
感想投稿日 : 2017年6月22日
読了日 : 2017年6月22日
本棚登録日 : 2017年6月22日

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