金融排除 地銀・信金信組が口を閉ざす不都合な真実 (幻冬舎新書)

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  • 幻冬舎 (2018年1月30日発売)
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「金融排除」橋本卓典

金融排除が拡がった理由は、金融庁が金融検査マニュアルによって全ての預金取扱金融機関に融資先の債務者区分の判定を行わせ、かつそれを金融検査で厳しく検証した為。結果、企業からするとどの金融機関から借りても同じ債務者区分をつけられる為、金融機関の多様性が失われた。

銀行法第一条
国民経済の健全な発展に資する

無尽とは、講の発展型で、早く拠出金を受け取る者は金利を払い、最も遅く受け取る者は配当を得られるというもの。まとまった資金を受け取る時間差によって生まれる不公平を利息や配当で標準化した。この無尽会社がのちの相互銀行。

相互銀行には、相互掛金制度が認められていた。予め掛金の金額や払込時期を決めておき、前倒しで払い込む場合は預金者の実質利回りが上昇する。掛金の最小単位は1,000円。

信金の課題解決型金融は、過去の金融ではなく将来に向けた金融。鍵は過去の経営結果である財務情報にあるのではなく、その原因である非財務情報、特に利益を創造する為の経営プロセスそのものにある。会員の非財務に係る課題を共有し、共に解決していく事で、営業利益の改善や将来的な成長が、信金については信用リスク、コストの縮減化を目指すもの。これこそがリスク仲介機関としてのコアスキルであり、持続的な競争優位の源泉となる。

信金の重要三要素
1.人と人との繋がり度を示す社会資本をKPIにして見える化
2.会員・お客様と対話するビジネスモデルとその見える化
3.会員による自治を基本としたガバナンス

京都信用金庫のビジネスマッチング掲示板
顧客からの販路や仕入先の紹介依頼が掲載されている。

クレドとは誰か一人が決めて、従業員が従うものではない。多くの共感を集めたエピソードを蓄積していく事で、いつしかそれらのエキスが結晶化したもの。

金融機関の顧客への販路拡大支援メリット
1.顧客の売上が増えて、信用格付が上がると回収できないと損失処理をしていた貸倒引当金が銀行に戻ってくる。
2.銀行の手数料が増える。
3.顧客の増加運転資金、新規の設備投資資金が生まれる。

問題は仕事の忙しさではなく、仕事に意味と使命感と満足感を持って打ち込めるか?毎朝出勤するのが楽しみで仕方ないか?

2016年、「協同組合」はユネスコ無形文化遺産に登録された。登録理由は、「共通の利益実現の為に、協同組合を組織するという思想と実践」であり全世界の協同組合が対象。

銀行は銀行法、信金は信用金庫法、信用組合は中小企業等協同組合法に基づいている。信金信組は非営利組織。

信金は会員、信組は組合員と呼ばれる顧客自身が信金信組と出資関係を結ばなければ融資を受けることはできない。

会員、地域社会の共感の追求が協同組織の真髄。

経済を伴わない道徳は寝言である。道徳を伴わない経済は罪悪である。-二宮尊徳

相互に信頼関係がある(仁義礼智信を守れる人)人だけが参加して融資する仕組みを五常講貸金と言う。

協同組合の第一号とされているのは1844年マンチェスターの「ロッチデール先駆者協同組合」。織物工などの労働者が資金を積み立て、自分たちのより良き生活の為に生活必需品(食料)を市場価格で取引できる店舗を設けた。組合員は平等に一人一票持つ。ロッチデール原則。

尊徳の五常講はロッチデールより20-30年前に設立されていた。

歴史とは善悪ではなく、作用と反作用の妥協点とその積み重ねである。

ヒトモノカネ情報、信頼が域内循環する地域社会同士が繋がり合う事でさらに地域社会を豊かにする。

日本は国民の6人に1人、約2,000万人が貧困。OECD最下位。

グラミンバンクは社会問題の解決が問題である為、投資家には投資額しか還元されない。

地域の結びつき、絆を社会関係資本と捉え、その社会関係資本が蓄積され、濃厚であればあるほど相互のやりとりが活発になる互酬性の規範が生まれる。目指すべきは担保・保証によらない融資そのものではなく、社会関係資本を豊かさにする事。

ダイバーシティで問われているのは女性や高齢者の雇用比率という形式ではなく、価値観。新たな発想、ビジネスモデルを阻む排除を乗り越えていく事が真のダイバーシティ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 金融
感想投稿日 : 2018年2月26日
読了日 : 2018年2月26日
本棚登録日 : 2018年2月26日

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