バルザックというオカルティストの手によるこの物語は、同時代の同じ傾向の作家たちの中にあってごくごく清らかで、高潔で、輝かしいと思っている。両性具有者であるセラフィタはだれの求愛も受け入れることはないけれど、ミンナとウィルフリッド、どちらにも深い愛を投げかけている。天使的愛という概念と地上的な愛が対立しつつも融和しているのはセラフィタの存在が天上的でありながらも地上的であり、かつ、男であって女でもありそのどちらでもないという彼(わたしは女だからセラフィタのことを呼ぶときに是非とも彼と呼びたい! それはセラフィタを男としてみているからではなくてわたしが女だから、というだけのことだ)の存在をそのまま映しているようで本当に美しいと思っている。セラフィタはわたしが憧れる人物像のひとつだ。「彼にとってはセラフィータ、彼女にとってはセラフィトゥス」という一説がこの物語のすべてを物語っている。角川の蛯原訳よりも、国書の沢崎訳のほうが好きなのは、セラフィタの不思議な力「スペシアリテ(spécialité)」を蛯原は「特殊」と訳し、沢崎は「実相観入」と訳しているからだ。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
少女
- 感想投稿日 : 2007年8月22日
- 読了日 : 2007年8月22日
- 本棚登録日 : 2007年8月22日
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