猫だましい (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2002年11月28日発売)
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本棚登録 : 504
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 ちょっと作者間違いで、図書館に予約を入れてしまったが、河合先生の著作なので、まぁ、間違いないだろうと読んでみた。面白かった。

 古今東西の「猫」にまつわる物語を読み解き、心理学者ならではの解説、感想が展開される。

「話がたましいの領域にまで拡大されるとき、人間のドラマにはしばしば動物が登場するものだ。」

 本書で取り上げられるのは、昔話のたぐいから、童話、絵本、ファンタジー小説、そして漫画と幅広い。 “たましいの領域”を語るのは、ノンフィクションや理路整然としたお話ではない。摩訶不思議な物語がおのずと多くなる。そして、そこでの登場するのは猫たちだ。

「エジプトにおいて、ネコの女神セクメトがあまりにも崇拝されたので、このような異教徒の宗教に対する反撥として、キリスト教は猫を無視、または敵視しようとした」(『猫の不思議な物語』(フレッド・ゲティングス著 松田幸雄・鶴田文訳 青土社)

 西洋において猫は、神と対立する存在として印象操作されてきたか?
 いや、そうでなくても、猫の行動、生態を見て、古来、人は、洋の東西を問わず、そこに解せないなにかを感じ取っていたのだろう。数多の不思議な物語に猫の存在は不可欠だということが、多くの著作を引いて語られる。

「なぜなしに存在し、なぜなしに納得させられる」

 著者は、それがファンタジーの本質ではないだろうか、と書く。
 いや、それは、猫そのもののことを表してはいないかな。

 本書で紹介され、解説された猫の登場する物語、読んでみよう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2020年12月10日
読了日 : 2020年12月9日
本棚登録日 : 2020年11月30日

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