コン・ゲーム小説といえば,知的ゲームとして,被害者を上手く騙す,スリルとスピード感,ユーモアにあふれる小説をイメージするが,そこまでのものはない。ユーモアこそあるが,詐欺の手法はやけにリアルだし,同じ人を繰り返し騙す上,テレビ・映画業界の内輪ネタが多く入り込めない。コン・ゲーム小説というのは,そもそも描くのが難しいのだろうが…。時代錯誤的な表現もあり,時事ネタも古い。古典として読むならよいかもしれないが,エンターテイメントとして読むなら,ほかに面白い作品がいくらでもありそう。★2かな。
〇 コン・ゲームの概要
1つめの詐欺
銀行の振込窓口の行員を調べ,行員の名前の入った受付印と振込依頼書を偽造
→1000万円
2つめの詐欺
宮田杉作という金持ちの老人を騙し,山岸久子と共演できるというニセ番組を作るという詐欺を行う。
→3000万円
3つめの詐欺
宮田杉作を騙し,従来よりも小さいサイズのテープの編集ができるスタジオ経営を持ちかける。
→6000万円
長島老人の復讐を兼ねて,映画マニアの橋爪正を騙す。落ちぶれた映画監督のルイス・アルトンの映画を作ると言って投資させた。
→1億円
サプライズ ★★☆☆☆
大きなサプライズはない。唯一のサプライズは,長島紀子が長島老人の娘ではなく愛人だったという点
熱中度 ★★☆☆☆
コン・ゲーム小説なので,先が気になってしかたなく,熱中度が高い…かというとそうでもない。詐欺自体もそれほどワクワクするものではないし,見せ方も平凡
キャラクター ★★★☆☆
長島老人,長島紀子,寺尾,旗本,清水と宮田老人など。それなりにキャラは立っているが…そこまで魅力的というほどめもない。特に長島老人のインパクトが弱い。ここは,もう少し天才的というか,謎めいた存在でもよかったと思うが…。
読後感 ★★★☆☆
最後は,長島老人の復讐として,悪役を騙すので読後感は悪くない。ただし,宮田老人がやや哀れ。
インパクト ★☆☆☆☆
薄い。読み終わった直後で,どういう詐欺があったか忘れてしまうほど。どの詐欺も現実感があるのだが,エレガントではないというか,小説らしい面白さに欠ける。
希少価値 ★☆☆☆☆
映像化もされているし(映画版は小説版とかなり内容が異なるようだが…),電子小説版もあり,希少価値はそれほどでもない。
- 感想投稿日 : 2016年8月11日
- 読了日 : 2016年8月11日
- 本棚登録日 : 2016年8月11日
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