月を見つけたチャウラ: ピランデッロ短篇集 (光文社古典新訳文庫 Aヒ 2-1)

  • 光文社 (2012年10月11日発売)
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感想 : 31
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光文社古典新訳文庫は他で見かけないものを翻訳してくれて好きなんだけど(新訳より初訳ものを評価したい)、ちょっと値段が上がってきましたよね。文庫でこのページ数で1000円オーバーは厳しい。とか言いつつ読みたいから買っちゃうんだけど。

さて閑話休題。ピランデッロはイタリアの劇作家でノーベル文学賞受賞者だそうです。毎日1話読めるという365作の短編集を書こうとしたけれど志半ば(それでも確か200数十編)でお亡くなりになったそうで。これはその中から選ばれた15作の短編集。劇作家でもあり、演劇用に脚色された作品の元ネタ短編とかも多く、なるほど、演劇っぽい不条理やブラックユーモア系の作品が多いのも納得。

個人的に好きだったのは、幻想色の強い「ひと吹き」、民話というか土着の伝説的な匂いのする「すりかえられた赤ん坊」(日本の妖怪だと姑獲鳥とかに近いノリ)、ある日突然自分が自分であるという確信を失ってしまった男の狂気「手押し車」、誰が狂っているのかわからなくなる「フローラ夫人とその娘婿のポンツァ氏」、人が死ぬ前に見るという走馬灯のような「ある一日」なんかが面白かったです。本を愛するあまり現実の人生をほとんど生きなかった男の「紙の世界」や、作家のところへ様々なキャラクターが押し掛けてきて愚痴るという「登場人物の悲劇」なんかは、作者自身の内的体験がちりばめられているようで別の面白さがありました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ:  ★イタリア・ローマ
感想投稿日 : 2012年10月29日
読了日 : 2012年10月26日
本棚登録日 : 2012年10月16日

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