森まゆみ『彰義隊遺聞』を読んだら無性に読み返したくなり部屋中探したのだけどみつからなかったので買い直しました。映画の帯がついたバージョンで、そういえば2015年に実写映画化されたのだっけ(見てない…)青林堂から出た版が実家にあったはずなのだけどあれも行方不明かも・・・。
閑話休題。慶喜謹慎後の彰義隊、秋津極は「君辱めらるれば臣死す」という潔癖頑固な武士気質ゆえに彰義隊で命を捨てようと覚悟、許婚の砂世との婚約解消を申し出る。砂世の兄で極の幼馴染である福原悌二郎は長崎留学から帰省中にこの話を知り納得がいかず、極を彰義隊から脱退させようと談判に赴くが逆に巻き込まれ・・・。一方で、同じく彼らの幼馴染である吉森柾之助は、養子先の陰険な養母らに愛想を尽かし出奔、たまたま極らと再会して成り行きで彰義隊士に。やがて上野戦争が始まり、三人の少年たちはそれぞれ思いがけない結末を迎えることに。
極が美形で好きだったなあ。杉浦さんの絵は独特の味わいがあり、時代の転換期の若者たちのやや過激な思想や行動、残酷な戦争の現実を描きながらも描写は淡々としていて過剰に感情に流れず、それでいて得も言われぬ情緒がある。悌二郎がふと柾之助に語る、子供の頃に蝉の羽化を見たことを語る場面や、逃走中の極と柾之助が納屋でふと目をさます場面など、なにげないエピソードを今でも夢の中でみた光景のようにふとした瞬間に思い出して涙ぐんでしまう。彼らは実在の歴史上の人物ではないけれど、こういう無名の市井の人々が確かに実在し生きて死んだというその血肉の通わせ方が素晴らしい。
ところで実写映画の出演者の中にオダギリジョーの名前をみつけて、イケメン役なら春日左衛門か丸毛靫負かなと思ったらまさかの森篤之進、いやしかしこれはこれでいい感じ。映画もそのうち見たい。
- 感想投稿日 : 2019年1月16日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2012年9月24日
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