2005年 日本
監督:青山真治
出演:浅野忠信/中原昌也/宮崎あおい/戸田昌宏/筒井康隆
タイトルは聖書の中で、十字架に磔けらたイエスが言ったといわれる最後の言葉「神よ、何ゆえに我を見捨てたもうや(マタイ伝27章46節)」。この言葉自体については色々な聖書解釈の一説に、イエスは最後の瞬間に神を信じていなかった、神に裏切られたと感じていた、ゆえにこの言葉があるのではないかというのを何かで読んだことがあります。映画の設定は近未来。感染すると自殺の衝動に取り付かれる奇妙な病気「レミング病」の流行で荒廃した世界。神はこの世界を見捨てたもうたのか、と問いかけているようであり。
しかし、以前読んだ青山監督のインタビューに、エンディング曲を当初ル-・リ-ドの「ロックンロール」を流す予定だったとあって、それは歌詞の中に「彼女はロックンロールに命を救われた」とあったからだと。つまりこの映画は、神ですら見捨てた世界を音楽が救う映画です。死に至る病=絶望に取りつかれた少女が、音楽によって命を救われるお話。
実にシンプルなテーマだと思います。ゆえにクライマックスが、砂漠で延々ノイズをバックに轟音ギターを奏でる浅野忠信という、一歩間違えれば退屈きわまりない大胆な演出。でもこれが、不思議なくらいカタルシスを感じさせてくれるのですよね。音楽の勝利が映画そのものの成功。伝わらない人には、さぞや眠い映画だろうなあと思いましたが。
アスハラ役の人がどっかで見たことあるのだけど思い出せず、しかしこの棒読みっぷり(でも妙な味がある)は役者じゃなくてきっとミュージシャンだろうなあと思っていたら、なんと暴力温泉芸者の人(中原昌也)でした。きっと昔のフールズメイトが記憶の断片に(苦笑)。
ナツイシ役の戸田昌宏という役者さんは、どうしても三上博史に見えて、でも三上博史にしちゃ若すぎるし誰だろうと映画見てるあいだずっと気になって気になって(笑)…いやあの、かっこよかったんです。不謹慎な言い方かもしれないけど、すごいオイシイ役だったんじゃないかなあ。ネタバレになりますけど、ついさっきまで鼻歌歌いながら楽しそうに運転していた彼が、突然ピストルを自分に向けた時、その瞬間こそがエリ・エリ・レマ・サバクタニ、と叫びたくなる瞬間でした。きれいなものから死んでいくんだよ、と、自嘲するように言ったのは彼でした。
個人的には、ものすごく好きな映画です。サントラ欲しいな。
(2007.03.28)
- 感想投稿日 : 2015年3月31日
- 読了日 : 2007年3月28日
- 本棚登録日 : 2015年3月31日
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