A CLOCKWORK ORANGE
1971年 アメリカ 137分
監督:スタンリー・キューブリック
原作:アントニイ・バージェス『時計じかけのオレンジ』
出演:マルコム・マクダウェル
若い頃にこの映画がとても好きで買ったDVDが発掘されたので久々に観賞。今回は今まで未読だった原作を先に読んでから観てみました。アレックスたちが使う独特の「ナッドサット」の言葉は、原作を読んだ直後だったので大体の意味がわかり、これは映画だけ見ていたときよりも理解しやすくなって助かった。昔はきっと感覚だけで理解できたのだと思うけど。
映像になることで、例えばコロバ・ミルクバーの内装はとてもぶっとんでいて素敵だし、近未来感は若干レトロチープでありつつもオシャレだし、全体的にサイケな印象に仕上がっているのはこの美術の力が大きいと思う。
暴力描写もスタイリッシュというと語弊があるが(原作のほうがエグかった)アレックスが「Singin' in the Rain」を口ずさみながら作家夫婦に暴行を加える場面などとても印象的だ(やってることはもちろんクズだけど)作家が後半でアレックスの正体に気づく伏線としてこの曲を使ってあるのは映画のほうの素晴らしいところ。
原作との差異としては、アレックスの凶器が原作ではブリトバ(かみそり)だったのが、あの仕込み杖みたいなのになっているところや、本を破られた老人と襲撃された酔っ払いの原作では別々のエピソードを一つにしてあるところ、あとは刑務所の中が映画は圧倒的に小綺麗で(原作はもうとにかく汚い)さらにアレックスが囚人の一人を殴り殺すエピソードが映画ではなくなっている。
映像処理として、序盤のビリーボーイの一味が女の子をレイプしようとしているところにアレックスたちが殴り込みに行く場面を劇場での芝居風にしてあるのもオシャレだった。原作ではレイプされそうになる女の子は10才くらいとなっていたが、映画は大人の女性。そして原作ではアレックス15才のためか、彼がレコード屋でナンパした二人の女の子をレイプする場面も、大人の女性で合意になってるし、早回しでコミカル。
そういう演出のおかげか、映画の暴力描写は原作よりややライト。ただ軽くなるのが良いかどうかはわからない。伏線として素晴らしかったが「Singin' in the Rain」を歌いながら暴行する場面は実際には単なる暴力描写より性質が悪いんじゃないかとも思う。
マルコム・マクダウェルは15才には見えないけれど、これ1作で映画史に名前を残す怪演。洗脳された後、暴力に吐き気を催しているが、それは条件反射的なものであって、彼自身の性根はもとのままな感じがとてもよく出ていたと思う。ルドビコ法は人間の本質まで変えられるわけではない、という根本的な欠陥。
原作も十分面白かったけれど、やっぱりこのサイケでスタイリッシュな映像と、実際に耳に聞こえてくる音楽なども含めて、やっぱり映画のインパクトのほうが大きかった。
最後に全くの余談なのだけど、たまたま嵐が配信してるYoutubeで待機児童のために紙芝居をするというのを見ていたら(https://www.youtube.com/watch?v=DfeVXUaVDh8)松潤が「A CLOCKWORK ORANGE」のTシャツを着ていて、勝手にシンクロニシティを感じました(笑)今の日本、ちょっとしたディストピア感あるかもね。
- 感想投稿日 : 2020年5月2日
- 読了日 : 2020年5月2日
- 本棚登録日 : 2020年5月2日
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