中国5大宗教と、その全ての上に君臨する共産党、という中国でしかありえない特異な状況を中国国内にいながら書く、という行為そのものが政治性を孕まざるを得ないだろうな・・・と読者としては背景を勝手に想像してしまう。
なので、どうしたって深くも重厚にも鋭くもなってしまいがちなテーマと思いきや、宗教者同士の(文字通りの)綱引きという荒唐無稽な設定と軽妙な展開で、聖と俗のすれ違いの一瞬を軽くふんわりと。
煩悩を捨ててある種の悟りを開くという宗教的なカタルシスが訪れるんだけど、とはいえやっぱり聖と俗が表裏どころかすぐ隣にあっけらかんと共存する軽やかさこそがなんかだと思う。なんなのかは僕にはうまく言えないけど。
それにしても閻連科さんの小説に登場するキャラクターは、いつも端役にいたるまで生き生きしていて面白いなあ。
後記に閻連科自身が表現したまさにこの通りの小説だと思いました。
”神聖と世俗が交錯するのときの曖昧さを描く、軽い小説
神聖と世俗がやむを得ず接触することの苦楽を自覚した小説”
あとたくさん出てくる切り絵がかわいい
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2021年10月10日
- 読了日 : 2021年10月9日
- 本棚登録日 : 2021年9月11日
みんなの感想をみる