アフリカ出身 サコ学長、日本を語る

  • 朝日新聞出版 (2020年7月20日発売)
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感想 : 37
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京都精華大学は、実は現役の時に滑り止めに受けて受かった学校だ。美大生だった私には、この学校へ進学した友人・知人が数人いる。当時は山奥の美大という印象以上のものを抱かなかった。

外国人、西洋やアジア系ではなくアフリカ人の学長というのが一際噂になり、この著作を手に取った。いろんな国の文化やくらしに触れたからこそ、日本という国のありのままの姿を捉えていて、感じたことを率直に表現できるのだろう。
天災に人災、戦争やコロナ禍、いろいろなことが起きるが、これからの世の中を作るのはこの地に住む人々なのだ。大学は指南を仰ぐところではなく、自身で考えて成長する場所。当たり前のことだが、日本の大学は徐々に経営至上主義と企業ファーストに成り果てた。慣習の良し悪しはともかくとして、学生に慕われ、時に厳しい姿は、学長というより徒弟を育てる親方に見える。これほど希望の持てる教育者が、今の時代日本にどれほど存在するのか。そんなことに思いを馳せた。大学だけでなく、社会での人との出会いで、人は育つ。コロナで人と出会うことも少なくなってしまった現在、非常に危惧されるのがこれからの社会のしくみだ。学生には厳しい現実が付きまとうが、諦めずに時に人を信じて歩める人になってほしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会科学
感想投稿日 : 2020年12月31日
読了日 : 2020年12月31日
本棚登録日 : 2020年9月23日

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