沖縄戦を生き抜いた沖縄女性、知花煉の沖縄-ボリビアを巡る一大叙事詩。ボリビア社会で生き抜く原動力が、悲惨な沖縄戦に生き抜いたマブイ落ちにあった!
日本兵を相手にしたたかに生き抜いていくパワーがその後のアメリカ軍やCIC相手とのやりとりでさらに昇華していく。
沖縄戦もボリビア移住、ボリビアでの生活もどれも悲惨、かつ波乱万丈。そこでここまでのし上がっていく、落ちても落ちてものし上がっていく気力と才覚がどこから生まれてくるのか?
池上永一が本書に込めた思いは、これまで日本国内ではそれほど日の当たらなかったボリビア移民について光を当てることであったのかもしれないが、本書はそこを超えて一大エンターテインメントとして花開いた。
一貫して続く知花煉の一人称語り。しかしそれは「語り」というおとなしいイメージとは異なり圧倒的なパワーとスピード、テンポ感で押し寄せてくる。
しかも二人のレンが一人称で語り続けるのだから、レンを通した世界観がそのまま瞼に焼き付くようだ。
それぞれ当時の沖縄情勢、南米情勢、冷戦状況などがうまい具合に散りばめられており、雑多感よりも繋がり感が強い。
特にボリビアにおける国民性というか民族性をうまく言い表したコミュニティの形と「公陸」の概念は、「ボリビア多民族国」そのもので激しくハラオチした。
マブイ込めのために再び降り立った沖縄で、マブイの煉が閉じ込められたままの現実が痛々しいが、この物語の進み続ける未来を示しているようでもある。
しかし、どうしても記載しておきたいのだが、何故本書の表紙絵はチェ・ゲバラなのか?本書の主要な登場人物ではある。しかし、トップ主題というわけでもないような気がする。
チェ・ゲバラ(本書ではエルネストだが)人気にあやかっているのか、読了後の高揚感のなかにあって、あるいはだからこそ、この違和感が抑えられない。
- 感想投稿日 : 2018年2月5日
- 読了日 : 2018年2月5日
- 本棚登録日 : 2018年2月5日
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