日本、そして日本人の「夢」と矜持(ほこり)

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  • イースト・プレス (2010年1月15日発売)
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3

学校時代に歴史を勉強したときにはそう感じることはなかったのですが、歴史と言うのは全部連綿と繋がっていると思います。太平洋戦争に日本が突入することになってしまうのは、その原因は明治維新まで遡ることになるでしょう。

そのような思いになったのは、数年前に井沢氏の本を読んだ時に感じましたが、今回読んだ渡部氏の本も同様の趣旨で書かれていると思いました。冒頭に書かれている通り、本書で書かれているのは「コロンブス以降の人種問題を背景にした「日本の言い分」(p5、35)」です、日本人としてそれを支持するかは別として、読んでおくことは大切だと思いました。

特に1929年大恐慌の原因が株式崩壊でなく、ホーリー・スムート法によりアメリカがブロック経済に入った(p161)という考え方は眼から鱗でした。

以下は気になったポイントです。

・最初に仏教徒に改宗された用明天皇(聖徳太子の父)の歴史的意義は、日本での取り扱われ方はそうではないが、ローマ史であればコンスタンチヌス大帝のキリスト教容認(313年)に匹敵する出来事(p27)

・人類にとって猛獣や猛禽(虎、ヒグマ、狼、鷲等)は恐怖の対象であり、人間の持たない能力を持っていると信じられていて(猛獣の神格化)、都市の名前や紋章に使われてきた(p51)

・幕末や明治に欧米から多数のお雇い教師がやってきて、西欧流の自然科学や工学を教えて日本の近代化に貢献したが、例外は数学であった(p79)
・ニュートンは、すべての運動を数字に置き換えるというアイデアの導入をした、この発想が近代物理学を生み出して、また帳簿の発明(シュペングラー)にも繋がった(p89)

・三井家の先祖が、代官から金銀を受け取り、それを60日以内に三井家の責任で支払うという為替制度を考案した、江戸大坂間は60日以内であったので残りの日数分だけ、三井家は金利を稼げた(p90)
・西欧で先物取引市場が成立したのはイギリス(リバプール)で1862年であるが、大坂堂島ではそれより130年も早い(p92)
・自力で黒船を造った藩が3つあった、それは、島津の薩摩藩、鍋島の佐賀藩、伊達の伊予宇和島藩で、白人の指導無しに蒸気船をつくった(p96)

・当時の先進国である欧米を真似できると確信したことが、日本人の独創でありそれに成功した(p103)
・日清戦争で日本が勝ち、朝鮮が独立したため、コリアは民族以来はじめて、大韓帝国と称し、日韓併合まで国王から皇帝となった(p114)

・海上では下瀬火薬、陸上では秋山将軍の機関銃導入が欧米の軍事水準を超えていたから、最強の軍隊に勝ことができた(p130)
・ここ500年間の世界史の事件で、コロンブスの新大陸発見に匹敵する大事件は、日露戦争の日本勝利(p133)

・1923年(大正12年)の移民に関する憲法修正が出されて、絶対的排日移民法ができた、アメリカ国籍をすでに得ている人からも遡って適用(白人とアフリカ人の子孫のみ帰化可能)するという空前絶後のものであった(p152)
・軍事同盟とは二国間のものでないかぎり、あまり意味がない、同盟国が増えるとそれぞれの責任が薄められる、日英同盟から日英米仏の4カ国条約になったときのように(p158)

・1929年の大恐慌は株式崩壊が引き金とされているが、ホーリー・スムート法によりアメリカがブロック経済に入ったことが真因である(p161)

・安重根という韓国人が韓国の植民地化に最も反対していた伊藤博文を1909年に暗殺したことは、マッカーサー元帥を日本人が殺したと言う衝撃に匹敵する(p182)

・日本が戦争に突入せざるを得なかった4要因は、1)アメリカの対日敵視政策、日英同盟廃止、2)米英のブロック経済、3)ソ連の共産主義の脅威、4)元老を失った後での明治憲法の欠陥(p188)

・日本は太平洋戦争には負けたが、西洋をアジアから追い出して、西洋の植民地勢力の権威を失墜させることには成功した(p202)
・イギリスはアメリカ独立を阻むため5年間以上にわたって戦った、途中にフランスが応援したこともあり、史上はじめて宗主国が植民地に敗れることになった(p204)

・太平洋戦争時、日本は兵器こそ自国の工場で造ったが、その兵器を造るための機械である工作機械はすべて欧米製であったのが問題であった、紫電改という新型戦闘機を開発できたが戦場に投入できなかった(p245)

・日本人に憧れる人が増える理由として、1)日本人が豊か、2)日本人の頭脳が明晰(特許数が多い)、3)平均寿命が長い、4)健康食である日本食を食べる日本人がスリム、である(p269)

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 日本
感想投稿日 : 2012年2月14日
読了日 : 2010年3月7日
本棚登録日 : 2012年2月14日

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