福祉システムが崩壊した日本。スラムと化した渋谷(シブヤ)が舞台の、ディストピア?小説。
気にかけてくれる「優しいおとな」であるモガミのことを突っぱねて悪い方に流されていく少年イオン。
地下で暮らすまさにアンダーグラウンドな集団の仲間になろうと地下に潜っていくイオンの不安と恐怖と、こうするしかないという諦めが寂しい。非行に走る子の心の動きってこういう感じなのかなと思った。
イオンの唯一の支えで、憧れだった双子の鉄と銅の真実が切なかった。それに、結末も悲しすぎる・・・!『死にがいを求めて生きているの』を思い出す。
「優しいおとなと優しくないおとなと、どっちつかず。俺たち子供はきっとゲームをしていたんだ。優しいおとなは本当の親。優しくないおとなは、親のふりさえもしない冷たい人たち。どっちつかずは、その時々で適当な人たち」
家庭で子どもへの愛情に差があるのはたしかに悲しいことだし、問題といえば問題なのかもしれない。でも、それを解決しようとした結果、イオンの出生とその後の人生は結局寂しくてつらいものになっちゃったな、という感じ。
「自分の目をあまり信じない方がいいよ、イオン。人は都合のいいものしか見ないこともあるんだ」
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2024年4月7日
- 読了日 : 2024年3月30日
- 本棚登録日 : 2024年3月27日
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