アブサン物語 (河出文庫 む 2-1)

著者 :
  • 河出書房新社 (2010年8月3日発売)
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本棚登録 : 171
感想 : 27
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今宵も猫本を1冊。内田百?『ノラや』とはちょっと趣向を変えて(失礼、かな?)、これを読み返して、寝ます。『ノラや』から町田康『猫にかまけて』『猫のあしあと』というライン(私が勝手に引いた)があるとすれば、年代的にも状況としてもその間に置かれるべき1冊。とはいえ、そのラインからはちょっと逸れるかな、というのが個人的な感想です。私がそう感じる理由は……。いくつかあるし、詳述すれば長くなりそうだし、ちゃんと綴れるかどうか心許ないし、控えます。敢えて、一言。「伴侶」であるアブサン(猫の名)が死んだとき、著者の「カミさん」は「辰吉丈一郎の十二ランウド目」と綽名されるほど泣き腫した、……と述べられているけれど、私が「泣いた」ことは書かれていない、ということ。敢えて言えば、そこが内田百?・町田康との違い、かな。勝手な感想で申し訳ない。でも、猫の大往生(と言っていいのでしょう)を看取ることのできた幸せ、というものも感じます。私は、ここに書かれているような事態が、実は嫉ましいのかもしれません。突然いなくなる、不慮の事故でなくす、よかれと思ったことではあるが僅かな時間で他人に託す、…、そういう猫との別れ方の多かった私は、最期を時間をかけて看取ることを許されたい、と思ってしまいます。いずれにしても、こちらの身勝手なのでしょうけれど。猫が、幸いなれば十数年から二十年余は長生きするとして、私が「その一生」に寄り添うには……、もう残されたチャンスは少ない?そんなことも考えて、また別な意味でせつない。この本自体の感想になっていませんね、再度陳謝します。「アブサン」は言わずと知れたお酒の名。「不在(absens, absentia)」とは直接関係ないけれど、どうしても「不在」の一語をイメージしてしまいます。それが私にはせつない理由のひとつでもあります。それにしても、羨ましい!こんなふうに一猫と添い遂げてみたい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2010年9月14日
読了日 : 2010年9月14日
本棚登録日 : 2010年9月14日

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