問題発見力を鍛える (講談社現代新書)

著者 :
  • 講談社 (2020年8月19日発売)
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細谷 功
ほそやいさお
1964年、神奈川県生まれ。東京大学工学部卒業後、東芝でエンジニアとして勤務後、アーンスト&ヤング・コンサルティング(クニエの前身)に入社、ビジネスコンサルタントの世界へ。2009年よりクニエのマネージングディレクター、2012年より同社コンサルティングフェロー。現在は問題解決や思考に関する講演やセミナーを国内外の大学や企業などに対して実施している。 『地頭力を鍛える』(東洋経済新報社)、『具体と抽象』(dZERO)、『メタ思考トレーニング』(PHPビジネス新書)などベストセラー多数。

同様の構図をミクロで考えれば、組織の中の上司と部下の関係も変化してきます。 単に「言われたことを忠実にこなす」のではなく、上司のニーズを理解した上で「頼まれてもいないこと」(でもそのニーズに合ったこと)、そして「先進事例(=誰かが既 にやったこと)から学ぶ」のではなく、「誰もやっていないことを考える」ことを能動的に提案していく姿勢が部下には求められるのです。

問題解決から問題発見に頭を切り替えるにはどうすれば良いのか?まず考えることは、全てのものを疑ってかかるということです。

たとえば「試験勉強型の秀才」ではこのような傾向が見られます。試験問題というのは、基本的に「そもそも解くべき問題か?」に関して疑う必要がないために、とにかく問題が与えられたらそれを解きにいくという姿勢が求められるからです。この場合は問題そのものを疑うことは全く必要なく、むしろ「わき日もふらずに」問題解決に取り組む必要があるのです。

・4Wは「個別事象」が対象で「Why」は「関係性」が対象である 4Wが尋ねる対象は「もの」「時間」「人物」「場所」といったものですが、Whyが尋ねているのは「手段と日的の関係」「原因と結果の関係」といった、2つ以上の事象の関係なのです。

・4Wは「点」、「Why」は「線」前のポイントは、4Wが一つ一つの点であり、「Why」はそれらをつなぐ線であるという違いです。つまりこれらの間には0次元と1次元という、「次元の違い」があるのです。

・4Wは繰り返せないが「Why」は繰り返せる 「『なぜ?』を5回繰り返せ」というのは製造業の現場等で、トラブルの真因を追求する際に唱えられてきたことです。まさに表面上の問題だけではなく「真の問題を発 見する」ために「なぜ?」が活用されてきた実例と言えます。 この場合は結果に対する原因という関係を「さらにその原因は?」「さらにその原因は?」と問いかけることで「根っこ(真の問題)から根絶する」ことにつなげています。

製品やサービスに関しての差の解消を国や地域の間でするのがタイムマシン経営だとすれば、これをさまざまなアイデアという対象で行うのがアナロジー思考です。アナロジーを簡単に表現すれば、「遠くから借りてくる」ことを意味します。 ここでいう遠くとは、見全く違うように思えるような無関係の領域、同じ業界内ではなく全く関係なさそうな業界、ビジネスのアイデアであれば同じビジネスの中で はなく、歴史上の出来事や遊びといったものを意味します。

ここからわかるように、アナロジー思考には2つ考慮すべきことがあり、一つ日はさまざまな世界に関心をもち、特に自分から遠い世界の知識を普段から得ておくことです。そしてそれを活用するためにもう一つ必要なのが、それら「一見まったく異なるもの」を抽象度の高い共通点でつなぐ抽象化の力です。

ただし、そもそも本を読むという行為はたぶんに能動的であることがほとんどで 「本を読め」と言う人は世に多いですが、「言われたから読む」人は実は少ないのではないでしょうか。「〇〇さんに言われて本を読んだ」という人はたくさんいます が、この場合でも、そもそも当人に能動的な読書の習慣がある場合に次に読む本の候補として「誰かに言われた(薦められた)」本を読むだけであって、そもそも読書の習慣がない人は他人に何か本を薦められても読むことすらないでしょう。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年11月15日
読了日 : 2023年11月15日
本棚登録日 : 2023年11月15日

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