宮沢賢治の彼方へ (ちくま学芸文庫 ア 3-1)

著者 :
  • 筑摩書房 (1993年1月1日発売)
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天沢退二郎 「 宮沢賢治 の彼方へ」

宮沢賢治作品(心象風景、詩人の彷徨)の軌跡を辿り、宮沢賢治の詩的問題を探ろうとした試論。


「詩とは死である」を命題とし、長詩「小岩井農場」では 自己消滅に至った宮沢賢治の詩的彷徨を 妹としの死が救ったという論考に驚く。詩人宮沢賢治と宮沢賢治の実人生を分けて 捉えている。詩人である著者ならでは〜詩人は職業でなく生き方という言葉通りの認識だと思う


宮沢賢治作品を「コミニュケーションを求めつつも コミュニケーションが不可能である軌跡」とし、深層主題である「分裂」と「雨」のモチーフと捉え、分裂の終わり(一方の死)の彼方に作品はようやく始まり、「雨は 沈黙の発する言葉であり作品そのもの」と結論づけている。作品読み直しの際の目付けにしたい


そのほか、風の又三郎が不吉な死の国の使者(死神)であったり、自己犠牲をテーマとした「よだかの星」の論考は 「銀河鉄道の夜」との違いを論じた箇所は面白い

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2022年4月12日
読了日 : 2022年4月12日
本棚登録日 : 2022年4月7日

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