ベルリン1919 赤い水兵(上) (岩波少年文庫)

  • 岩波書店 (2020年2月16日発売)
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本棚登録 : 289
感想 : 17
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昨年にデビュー作の「オーブランの少女」、そして「戦場のコックたち」を読んだことで、お気に入り作家となった深緑野分(ふかみどりのわき)さん。
Twitterで、ご本人のアカウントをフォローさせていただいていますが、少し前からこの本を激推しされていて、オビの推薦文も書いておられるということで、発売日に書店を3軒回って見つけ、迷いなく手にとりました。

岩波少年文庫を買うのって何年ぶりかなぁ。
「ニールスのふしぎな旅」、「エーミールと探偵たち」、「名探偵カッレくん」、「レムラインさんの超能力」、「シャーロック・ホウムズ(←この表記がレアねww)」シリーズなどなどなど、小中学生の頃はよく読みましたが、50になろうとする年に買うとはいやはや。

さて前置きが長くなりましたが、本作はベルリンの貧しい通りに住むヘレという少年とその家族ゲープハルト一家を中心に、1919年、1933年、1945年といずれもドイツにとっての激動の年代を描く三部作の物語の第一部です。

1918年の11月革命による皇帝の退位とドイツ帝国の終焉〜ワイマール共和国の樹立、その後のスパルタカス団の蜂起と鎮圧の様子などが、生々しく臨場感たっぷりに描かれます。
それらと現在の僕自身を比べてみて、贅沢こそできないものの日々の食べる物には困らない生活、あるいは戦争とは無縁の生活のありがたさをヒシヒシと感じながら読み進めました。
少年向けというよりは、もう少し上のヤングアダルト世代向けに書かれているようですが、読みやすくかつ読み応えがあり、あらゆる世代の心にささる物語です。

革命が起こってから一区切りの終焉までという意味では、描かれる年代は異なるものの「小説フランス革命」を彷彿とさせられ、また第一次世界大戦と社会主義革命を目指す有志たちという観点からは、舞台となる国は違えど「チボー家の人々」を思い起こさせられました。
ここ1〜2年で読んだ別々の本のストーリーが、パズルのピースのようにカチカチとハマっていく感覚を味わえました。これも読書の醍醐味ですね。
第二部の1933が4月に、第三部の1945が6月に出るそうで、買い揃えることが確定しました。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: クラウス・コルドン
感想投稿日 : 2020年2月22日
読了日 : 2020年2月19日
本棚登録日 : 2020年2月16日

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