月の影 影の海 (下) 十二国記 1 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (2012年6月27日発売)
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感想 : 682
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新潮文庫より完全版という体裁で刊行されて以来、ずっと読もうと思い続けて、なぜか買えてなかったシリーズ。
この10月〜11月での2ヶ月連続4冊にも及ぶ待望の新作刊行のニュースに背中を押されて、いよいよ十二国記の世界へ足を踏み入れました。
(実は、完全版ではEpisode0と位置付けられる「魔性の子」のみ、完全版刊行開始前に読んでいますが…)

突如学校に現れた、薄い金色の髪を持ち、着物のような服を纏う謎の男に、行き先も詳細も説明なく一緒に来るように言われた、優等生の女子高生・陽子。
と同時に、巨大な怪鳥の化け物に襲われ、何が何かわからぬまま、謎の男の使役する妖獣の背に乗って異世界へと連れられてしまいます。
異世界で目を覚ました陽子は、男から渡された鞘付きの宝剣は手にしていたものの、男とははぐれており一人異世界をさまようことに…

孤独に怯え、望郷の念に涙し、親切に近寄ってきた者に裏切られといった辛く過酷な経験が陽子に降りかかる中、彼女の心は荒み、時に利己排他的な考えにとらわれてしまったりもします。
そんな彼女に同情したり、時にムカついたり、もどかしさを感じたりと、読んでいるこちらも心を慌ただしく揺さぶられどおしでした。

特に印象に残ったのは、先の見えぬ旅路の中、時折陽子の前に姿を見せる薄蒼く光る毛色の人語を話す猿です。
陽子が聞きたくないような、陽子を不安にさせイラつかせるようなネガティブなことばかりを述べたててくる蒼猿(どうやら陽子の無意識下のネガティブな思念が具現化したもののようなのですが)を見てると、「僕の頭の中あるいは心の中に住みついているヤツと一緒や」と思い、少なからずゾッとしました。

旅路の中、楽俊という半獣の友を得たことで、陽子の心が少しずつほぐれ、同時に彼女の背負った運命も少しずつあらわになっていきます。

読み終わって、壮大なスケールの運命、十二国各国の成り立ちのシステム等々に、ただ圧倒され魅了された自分に気づきました。

そしてラスト1ページで、十二国記世界の歴史書の記述が引用され、このエピソードの結末が語られているのですが、大げさでなくリアルに鳥肌が立ちました。
いやはや凄い世界に足を踏み入れたものです。
これからまだまだ、この世界に浸れる幸せと歓びに胸がいっぱいです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小野不由美
感想投稿日 : 2019年8月11日
読了日 : 2019年8月10日
本棚登録日 : 2019年8月6日

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