食べかた上手だった日本人――よみがえる昭和モダン時代の知恵 (岩波現代文庫)

著者 :
  • 岩波書店 (2015年8月18日発売)
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感想 : 9
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昭和初期、戦前期の食生活を当時の雑誌のレシピや台所用品から振り返っている。もともと大正から昭和前期、いわゆる戦前のモダンな時代の風俗に興味があって、「戦前」というと灰色なイメージでとらえられがちだけど、実はとてもおしゃれでカラフルな時代だったのではと思っているので、その確信を深めてくれるテイストの本だった。
とはいうものの、当時の食事は全般的に動物性たんぱく質が少なめ。もっと前の時代からだろうけど、こういう食生活が日本人の体格を貧相にしているのだろうなあと思ったり。
とはいうものの、そういう自国でまかなえるものを食べて暮らしていたからそれなりの自給率があったよう。考えてみれば当たり前のことで、昨今この国の食料自給率が低いのは、外国由来の食物を食べ過ぎているからといえるだろう。日本ほどバラエティ豊かな食卓はほかにない……っていうか、他国は家の食事なんて常備菜でいつも同じもの食べるものだろう。毎日違うものを食べようとしてれば、バラエティ豊かになり自給率も下がるわなあ。よって、自給率を高めるのなんて簡単じゃん。
卓袱台検証も面白かった。その由来は長崎のしっぽく料理を食べるための台だったとか。そういえば、しっぽくってまさに「卓袱」って書くじゃん。卓袱台の脚は天板の大きさに収まらないといけないから、意外と低かったっていうのも発見。これによって、星一徹のちゃぶ台返しの迫力も半減したわ。
検証している内容も面白いんだけど、文体が面白くてそれが気楽にページをめくる助けになった。いくら内容が面白くても、このテの本をわりと読んでいることもあって、いわゆる「岩波現代文庫」的に書かれていたら途中で食傷してたかも。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年11月19日
読了日 : 2019年11月18日
本棚登録日 : 2019年11月18日

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