2年ほど前に、『ミナを着て旅に出よう』(文春文庫、2014)を読んで、その無理のない自然な姿勢に感銘を受けて以来、皆川明という人物は関心のある、あこがれの人だ。この『生きる はたらく つくる』は『ミナを着て~』よりも深く皆川さんのことがわかる。
そしてやっぱり思ったのは同じこと。ちょっと長い引用だけど、象徴的なのは「縫ったりするのは、けっしてうまくない。うまくできないことは、なかなか覚えない。上達するのに時間がかかる。だから逆に、こういう仕事は自分にとって、長くやっていられそうな仕事だな、と思ったのだ。うまくできないことだからこそ、ずっとつづけられるんじゃないかと。妙な考え方だと思われるかもしれない。スキルとかキャリアアップの発想からすれば、得意でないものを四苦八苦してやっているのは効率も悪いし、ストレスだし、得るものが少ない――そう考えるのが普通だろう。でも、そうは考えなかった。この仕事は自分の得意なことではないから、長く続けられそうだ、と当たり前のように思う自分がいた。」(p.44)というあたりかな。自信とは違うものだと思うけど自分の感覚を頼りに、信頼してぶれずに生きる姿勢が表れていると思う。
皆川さんは自然と「よく生きる」ということを知っている人なんだなと思うし、だからこそ長江青さんや田中景子さんといった稀有な仲間が寄ってくるんだな。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
未設定
- 感想投稿日 : 2022年7月10日
- 読了日 : 2022年7月5日
- 本棚登録日 : 2022年7月5日
みんなの感想をみる