古代ギリシャのリアル

著者 :
  • 実業之日本社 (2015年10月15日発売)
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のっけから驚く
ギリシャは白くない!
元々神殿は極彩色に彩られていたのだ!
大英博物館が、所蔵するパルテノン神殿のフリーズ(建物上部の装飾彫刻)の色をこすり落とし白く磨き上げた
博物館のスポンサー命令とのことが1939年に発覚
なんとまぁ!

18世紀半ばから西欧でギリシャブームが起こる
ギリシャは崇高で静謐、単純美のシンボルでなければならない
大理石は白く輝いていないといけない
神殿は白亜でなければならない
国全体も、古代ギリシャっぽくないものは破壊され、古代ギリシャっぽい建築物が建てられた
西洋人が古代ギリシャの理想化する理由
それは「ギリシャ文明を自分たち西洋世界の共通のルーツ」だと信じているから!
しかしながらギリシャ文明はエジプト文明をはじめアフリカやアジアに起源があり、西洋文明の出発点は古代ギリシャではなく東洋におくべきでは…(黒いアテナ論争)という意見もあり

というわけで
「白亜の、白人の、古代ギリシャ」は西洋がそうあってほしかったギリシャの幻想が投影されている

中世ギリシャは存在しない
1000年の空白あり(確かにそういえばそうである)
古代ローマ(東ローマ帝国、オスマン帝国)に吸収された
次にギリシャ人を名乗る人が現れるのは19世紀(ギリシャ独立戦争)
古代ギリシャは多神教(ただし宗教という概念や言葉はまだない)
現代ギリシャは一神教(東方正教徒)
まぁそんな感じで古代ギリシャ人と現代ギリシャ人は異なる
(しかし現代ギリシャ人は古代ギリシャ人に大変誇りをもっている)

他にも
ギリシャ神話の世界、オリンポス十二神とその履歴書(これは役立つ)、古代ギリシャ人のメンタリティ、価値観や時間感覚(特に労働に対する価値観が日本とまぁ違うこと)、夢占い、盛んな同性愛(!)、日本と同じくセミ(ミーンミン鳴く蝉です)に情緒を感じる…など

なかなか面白いネタが多く、ギリシャの知識ゼロのド初心者の私にはピッタリであった

最後に著者について
藤村シシン氏
古代ギリシャ・ギリシャ神話研究家
高校生の時に「聖闘士星矢」にすっかりハマり、ギリシャ神話に興味を持つようになる…
ちなみに女性である
ネット検索するとギリシャの衣装で登場しており、なかなかインパクトがあって面白い
情熱をもって好きなことを仕事にするというのはまさにこういうことなんだろうと思わせる女性である
こういう方の活躍はこれからも楽しみだ

こういう本をおり混ぜながらギリシャの歴史を知っていくのはずいぶんおトクな気がする
楽しませていただきました♪

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2021年9月8日
読了日 : 2021年9月8日
本棚登録日 : 2021年9月8日

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