死ぬ瞬間と死後の生 (中公文庫 キ 5-2)

  • 中央公論新社 (2001年6月1日発売)
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感想 : 25
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 「死ぬ瞬間」で有名な”死の受容の五段階”を提唱したキューブラーロスの講演録。

 ロスのウィットに富んだ講演の様子がよく伝わってくる。自分や大事な人の死を受け入れた子ども達のエピソードにはどれも目頭が熱くなる。
 そして、この著書では以前の著書にはなかった死後の世界や転生について語られる。これについては非常に否定的な意見が多いことだろう。実際、講演録でもロスはこの話題について極力慎重であろうとする場面も見られる。
 私は死後の世界は否定的だが、それでも”死の受容の五段階”のみを取り上げ、それ以外のロスの考えを見ない(知らない)人たちにも強い憤りを覚える。大事なのは”死の受容の五段階”を経て、なぜ人は死を受容できるのかではないか。ロスは死を始めとした全ての苦しみは成長の為にあるという結論に辿り着いた。人は死ぬ間際までも(ある意味死後も)死という苦しみと向き合うことによって成長できる。
 確かにロスは多くの死に向き合う中で”死の受容の五段階”を提唱した。そしてさらに多くの死に向き合う中で死後の生について語る様になった。だが、どちらもロスの核心ではない。ロスが最も言いたかったことは、人は死を経て成長し得る、ということだったのではないだろうか。一連のロスの著作を読んで私はそう感じた。
 
 この本は本当に多くの人に読んでもらいたいと思う。
 ”死の受容の五段階”は知ってるけどロスをよく知らないという人に特に読んでほしい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 死生学
感想投稿日 : 2011年10月18日
読了日 : 2011年10月17日
本棚登録日 : 2011年8月30日

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