前作で、どこか島家は敬次郎の呪いから除外されているような気がしていた。
島家こそ、喜助一家を何とか助けてくれていた家で、敬次郎はこの家にだけは呪いをかけていないのではないかと。
だが、『呪い唄』の結末を読んで、それは違う気がした。
確かに、島屋敷を歪ませはしなかったかもしれない。
それはもしかすると、島家が喜助一家を助けようとした家だったからかもしれない。
けれど、人間の感情の複雑さは、多分そんなに明確に憎む相手を区別しないんじゃないだろうか。
それこそ、坊主憎けりゃ袈裟まで憎い。
どんなにいい思い出があっても、一つの大きな凶事がそれをどす黒く染めてしまうこともある。
敬次郎は、確かに有力者たちを恨んだかもしれない。
けれど、それはしばらく離れていたことによって、「早瀬」という土地そのものへの憎しみに変わったんじゃないか。
そう思わずにはいられない、今回の仕掛けだった。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
日本文学・評論
- 感想投稿日 : 2015年7月27日
- 読了日 : 2015年7月27日
- 本棚登録日 : 2015年7月26日
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